最近、調べ物をしている中で、幾つかの統計データを見る機会がありました。2016年12月末時点の日本の家計における金融資産が1,800兆円を超えたことは最近の報道にもありましたので、記憶に新しい数値でした。しかし、そのうちの現金預金が半分以上の936兆円に達し、その大部分が銀行預金であること、また、524兆円が保険商品関連に振り向けられ、株や投資信託などの投資関連に向かっている金額は263兆円と、金融資産の15%に満たない現状をあらためて認識しました。
このような巨額の預金は、世の中のどこに向かっているのでしょうか。預金を預かる立場にある金融機関のバランスシートを見てみると、その4割程度が貸出に回っています。したがって、われわれの銀行預金の半分近くは国内の企業や個人(主に住宅ローン)に対する貸付金として活用されていると考えることができます。さらにその詳細を見ると、最近伸びているのは企業の事業向け融資というよりは、不動産関連向け融資、つまり住宅ローンや不動産REITへの貸付です。つまり、われわれの銀行預金のかなりの部分は、回り回って不動産に向かっており、それが不動産価格を押し上げてきた要因になっていることが分かります。
銀行が中央銀行等に預ける預金を除けば、預金の向かう先として次に大きいのは国債です。2012年3月のピーク時には、金融機関は現在の倍の国債残高を保有していたので、5年前には貸出の額に匹敵する国債を持っていた銀行もあったと思われます。政府、日銀が超低金利政策を採用し、マイナス金利を解禁したことから、大量の国債が売られましたが、現在でも国債残高の最大保有者は日本の金融機関です。そのほかには銀行資産は外国債券、株式などの有価証券等にも振り分けられています。
銀行自身が預金以外にも外部から資金調達をしていますし、資産、負債の構成は多少複雑ですが、かなり単純化して考えれば、預金の40%が不動産、個人、企業向けの貸出、25%が中央銀行等への預金、25%強が有価証券でそのうちの多くが国債に回っているといえます(10%弱はその他)。ちなみに、現在、中央政府及び財政融資資金が発行している債券残高は1,000兆円を超えていますが、約4割近くを中央銀行が保有している状況になっています。この背景には、銀行が2012年以降、超低金利を背景に国債残高を減少させている事実があります。
最近では、私たちの預金は銀行を経由して、株式、海外債券、低流動性資産への間接投資にも振り分けられています。今後、国債依存度の高かった銀行のバランスシートが変化し、多様な資産に投資を行う現在、資産運用の巧拙が銀行の健全性のカギを握る状況になると思われます。私たち預金者は銀行に預金を行う際、しっかりと利用銀行の財務状況や運用状況に目を配る必要が出てくるものと思われます。