家にいることが多かったおかげで読書も多少捗りました。連休前に知り合いの方に薦めていただいた「黒潮文明論」(図書出版彩流社 稲村公望著)、時間が取れずに読めずにいた、「マリタイム・エコノミクス」(一般社団法人日本海運集会所 マーティン・ストップフォード著)、「知の逆転」(NHK出版新書)を読む機会に恵まれました。また、石原慎太郎氏が田中角栄の一生を一人称で描いた「天才」(幻冬舎)と、火坂雅志著「真田三代」(文藝春秋) は読み物として楽しめました。結果、日本、世界の歴史、これからの時代について考える贅沢な時間を持つことが出来ました。
映画の話に戻りますが、この映画の舞台になった2007年から2008年に、サブプライム問題の表面化しつつあった当時、私どももヘッジファンド投資を通じて様々な異変に直面していました。当時のコラムを読み返すと、かなり緊迫した雰囲気を思い出します。
今の仕事を通じて親しい間柄となったニューヨーク拠点のヘッジファンド運用会社のCIOは、「マネー・ショート」では当時(ブラッド・ピット演じる)伝説的なトレーダーに教えを乞う若手投資家の役どころのモデルとなっています。昨年2月頃に彼と食事をしているときには、本作の本人役の台詞の手直しを頼まれていたらしく、いろいろと楽しそうに書き込んでいました。その後、映画が上映された後に本人に聞いてみると、「コミカルに描かれ過ぎだ!」と少しだけ不満そうでした。はたから見ると、特徴をうまくつかんでいるような気もしましたが。
ゴールデンウィークを挟んで為替が乱高下する中、G7を控えて各国政府、中央銀行の焦りが伝わってくるように感じます。金融緩和による景気刺激策の効果は徐々に失われ、実体経済においては低成長が常態化する現在、GDP成長率の上昇、株価上昇、インフレ率上昇等の目に見える結果にあまりにも追い立てられている節もあります。これも、ポピュリズムに染まった現代の民主・資本主義の宿命なのかもしれません。結果として、市場には資金が溢れ、サブプライム前と似た状況に徐々に近づいています。まったく同じ形ではないにしても、歴史は繰り返します。連休中に読書し考える機会に恵まれ、少し長い目で見て社会的に意味のある仕事を今の投資運用業を通じてできないものかと思考を巡らせています。