日本政府観光局のデータによれば、2015年の訪日外国人数が10月で1,829万人に達したそうです。あと2ヶ月で2,000万人の達成は難しいかもしれませんが、昨年に政府が目標に置いた2020年に2,000万人の受け入れは、早々に達成が出来そうです。内訳をみると、中国からの来訪者が446万人、韓国からが371万人、台湾からが344万人と、この三カ国からの訪日客が圧倒的に多く、香港、米国、タイ、オーストラリア、マレーシア、英国、フィリピン、シンガポール等からの来訪者がそれに続いています。各地方自治体も、海外からの観光客誘致にしのぎを削る状況のようです。これに伴い、各都市における宿泊施設の需要が急増しています。金融市場でも、ホテルREITの価格が上昇を続け、新規上場も出て活況です。分かりやすいインバウンドのビジネスとしては、これらの宿泊業界、小売り、飲食等が代表的なものです。いろいろとみていると、お菓子の販売の急増、電化製品の売り上げ増加、野菜、果物に対する需要、はては中国人富裕層マーケットを対象とした医療サービス、登山ツアー等、様々な分野でインバウンドのビジネスが盛り上がっているようです。
島国である日本において、これほどまでに国をまたいでの往来が活発になったことはかつてなかったことだと思います。しかし、同じ島国でも、英国ではこのような状況が長く続いてきました。そして、英国は、英国らしさを失わず、多くの観光客の受け皿となってきました。2013年の訪英旅行者数は3,281万人と、日本の2倍近い数でした。今後、アジアの人口の増加、中所得者階級の増加が加速する中、訪日観光客が英国の数値に迫る可能性は高いと思われます。更に、製造業などの担い手としての地方都市の役割が限界を迎えている中、観光事業を収入の主眼に据えようとする地方都市が増えることは想像に難くありません。
過去に、アジア各国からの訪日旅行者が持つ不安材料をまとめた資料を見つけましたが、言葉の問題、滞在費用、渡航費、地震への不安が上位を占めていました。今、円安の進行やアジア各国の平均的な旅行者の可処分所得の向上により、費用の問題は徐々に低下していると思われます。また、観光ビジネスにおける言葉の対応はここ数年でかなり質の向上を見たと思います。個人的には、数日から数週間の旅行者に対する対応は、かなり高度化し、トレンドも出来上がったため、一定の成功を見ており、今後も継続するのではないかとみています。一方で、今後課題になり、ビジネスチャンスにもつながるのが、長期滞在者への対応ではないかと考えています。数週間から1年以上の旅行者の滞在を促し、受け容れるような仕組みが出来上がれば、日本では、より多様なインバウンドビジネスが展開されると思います。
留学生の受け入れ、長期滞在者向け宿泊施設、そのほか、季節に応じた様々な長期滞在者向けプログラムが考えられると思います。更には、国内で急増する空き家を活用した外国人向けのセカンドハウスの供給なども一案です。人口が減少し、産業の空洞化が進む日本で、明らかな成長産業がここにあります。2020年のオリンピックまでがひとつの目安になるとは思いますが、短期的旅行者の受け皿だけではなく、長期滞在型ビジネスについても思いを巡らせてみたいと思います。