今月は、10月7日と10月30日に日銀会合が予定されており、市場参加者からは、更なる金融緩和を期待する声も聞こえています。日経平均株価は、1年前の金融緩和発表後に付けた17,000円のレベルよりは高い位置にあるものの足下は覚束ず、世界的に株式の変動率が上昇していることもあり、国内のみならず、海外投資家からも今回の日銀の緩和を期待する声が上がっているものと思われます。
しかし、日銀が現在の国内景気を緩やかな回復基調にあると認識していることは明らかですし、これ以上の緩和が経済に与える影響が限定的であることを認識していると思うので、個人的には今回の緩和の可能性は低いのではないかと思っています。昨年3月のコラムで触れたように、ヘッジファンド戦略への資金流入をみると、一部の市場参加者が市場のサイクルをどのようにとらえているかが伺えます。
当時のコラムに、「過剰流動性相場の初期段階においては、マネージド・フューチャーズ戦略を除いたほとんどの戦略が良好なリターンを記録しています。一方、金利戦略をはじめとする多くの戦略のパフォーマンスが伸び悩み始めることが、過剰流動性相場のピーク時に見られる現象です。その後、市場の変動率が上昇を始める段階では、優勝劣敗が明らかに出るものの、グローバルマクロ戦略の活躍が見られ、最後に一部の市場のクラッシュが始まる中で、マネージド・フューチャーズ戦略の運用成績が復活する傾向があります。そして、回復期の初期には不良債権系の戦略が有効になります。」と記載しましたが、今年のヘッジファンド戦略への資金流出入動向を見た時に、少し驚きました。
2015年8月末までのヘッジファンド戦略の資金流出入を調査した、Eurekahedge社のサーベイを見ると、他戦略を抑えて、マネージド・フューチャーズ戦略への資金流入が首位となっていました。しかし、パフォーマンスに関して言えば、マネージド・フューチャーズ戦略はさほど冴えない状態が続いています。このことは、足下のパフォーマンス追求を別にしても、投資家が今後のボラティリティ上昇や株価下落などの、他戦略では収益が出にくい環境を想定していることを示していると思われます。
今年も残すところ3ヶ月を切りました。2015年のパフォーマンスを見ると、平均的な欧米株投資家は5%以上のマイナスとなっているでしょうし、エマージング国への投資家はさらに悲惨な状況となっていると思われます。ただ、日本株式投資家はプラスを維持していると思われます。一方、ヘッジファンド投資家については、ほぼゼロ収益となっているものと思われます。ヘッジファンド投資戦略へのリスク配分のサイクルに従って、今後は波乱含みの市場となるのか、今回は通常とは異なる状況となるのか、年末にかけて注意深く見て行こうと思います。