本年もなにとぞよろしくお願いいたします。2014年が皆様にとって素晴らしい1年になりますよう、心より祈願しております。
昨年、2013年は、先進国市場が軒並み好調となる中、特に、アベノミクス、円安を背景として日本株式市場は大きく上昇しました。今年は、国内では、消費税増税が当面の大きなイベントになりますが、同時に、安倍政権が掲げた成長戦略がどの程度現実性を帯びるかが焦点になります。具体的には、持続的なGDP成長率の上昇、円安効果以外の企業業績の上昇、さらには、インフレ率の上昇が現実のものになるかが日本に対する資金流入が持続するかを決める要因になるかと思います。また、世界の経済、金融市場をリードする米国における雇用、消費、金融政策が投資環境を大きく左右します。
一方、リスクも存在します。筆者が思いつくものだけでも、中国のシャドーバンキングを政府が管理しきれずに、不動産をはじめとするバブル崩壊が起きる可能性。また、想定よりもスピードの速いインフレ発生による経済成長の鈍化が起きる可能性。あるいは、狭い器に急激に資金が流れ込んでいるフロンティア市場において資金の逆回転が生じるなどの事象も考えられます。しかし、2014年1月時点では、これらのリスクシナリオが現実となるほどの過熱感は感じられません。
そんな中、例年のことになりましたが、2014年のヘッジファンドを取り巻く環境について、昨年の予想の採点をしながら考えてみたいと思います。
(1) 信用(クレジット)市場は、おおむね昨年の予想通りの展開となりました。欧州の社債市場や米国の中小型の起債及びアジア市場が好調となりました。2014年も2013年後半の地合いを引き継ぐものと予想しています。日本銀行の黒田総裁、今月末に就任する米国FRBのイエレン議長、さらにECBのドラギ総裁と、政府からの信任も厚く、金融緩和に積極的な中央銀行のメンバーが当面協力して動くものと考えられます。先進国における過度なレバレッジは未だに見られないこともあり、クレジット市場は、当面堅調に推移するものと思われます。今年も6-9%程度のリターンを見込める投資対象と思われます。
(2) 商品市場は、予想通り、他市場に対して大きく出遅れました。エネルギー価格が若干上昇したものの、金属を中心に穀物などの価格は大きく下げたことから、予想を大きく下回る価格推移となりました。今年は、所々で投機的な動きが出てくるものと思われ、年後半には、商品価格の上昇を想定しています。年間では10%程度の上昇を予想します。
(3) 10年物金利については、2013年は、株価の上昇とともに日本を除いては50bps~100bpsの上昇がみられ、予想を若干上回る金利上昇となりました。政策により短期金利は低位に抑えられているものの、将来の金利上昇を織り込むことから、長期金利が上昇し、イールドカーブがスティープ化(右肩上がり)する傾向が続くものと思われます。2013年は、先進国の中でも、日本の金融緩和が突出した感があり、物価が上昇することで、実質金利は当面マイナスを維持することになります。但し、2014年後半には、欧州金利とのスプレッドが更に縮小するのではないかと予想しています。
(4) エマージング市場に対する昨年の予想は、中国、ブラジルを中心に構成要因として大きな市場が振るわず、2013年通年では先進国株式市場を上回るほどのリターンを期待していましたが、実際には下落しました。一方、アフリカの株式市場や、所謂フロンティア市場といわれる市場が発展段階にある国々の株式は上昇しましたが、市場規模が小さく、影響は小さいものにとどまりました。2014年も前半は、同様の推移を想定します。しかし、年中旬以降では、積極的な金融緩和策と、投機的な資金の動きが重なるタイミングでは、一時的に上昇すると思われます。
(5) 市場ボラティリティは、米国市場が安定したことで、予想よりも低位で推移しました。日本、欧州は、米国のボラティリティこそ上回ったものの、過去比では低水準となりました。2014年は、長期金利が上昇する局面では、株式ボラティリティも上昇するものと考えています。年初から年央にかけては、米国の量的金融緩和の縮小(テーパリング)の状況に一喜一憂しながら、市場の変動率も昨年比では上昇するものと思われます。
(6) 日本株市場は、大きく上昇すると予想していましたが、年間で50%を超える上昇率を記録するほどとは考えていませんでした。昨年、安倍政権の誕生、金融緩和による不動産、株式市場への資金流入、貿易赤字による円安進行等を材料とした株式市場の上昇を予想しましたが、金利がこれほど低位に安定するとは想定外でした。2014年には、後半にかけて国内長期金利が上昇する局面で、株式市場は若干調整する局面を予想しています。それでも、ファンダメンタルズが好調であることから、年間で10%程度の上昇を予想します。
(7) 最後に、ヘッジファンド業界については、昨年の予想通り、業界の再編と伝統的資産との融合が進んでいます。このトレンドは、1年単位のものではなく、5年から10年続くトレンドと思われます。2014年には、業界に資金流入が続くことにより、全体的なパフォーマンスは好調なものとなることが予想されます。また、あらためて、スタートアップのベンチャー的なヘッジファンドの数も増えてくるものと考えています。
冒頭にも書きましたように、いくつかのリスクは存在するものの、金融市場の年初の雰囲気には過熱感がみられず、落ち着いたものになっています。したがって、市場の大きな調整はないものの、すべてがうまくかみ合った2013年の市場の再来は想像しにくいものがあります。新しい収益機会を見定め、混み合った過熱感のある投資対象を避けることは、現在のような市場環境には特に必要なことだと考えています。
本年もなにとぞよろしくお願い申し上げます。