海外の運用者と話していると様々な投資商品のアイデアを聞く機会があります。多くの投資家に馴染みが薄い投資対象の一つに、リース取引(機械や設備等の賃貸)があります。リースに投資をするという発想自体、あまり一般的ではないと思いますが、実は日本でも節税商品として根強い人気のある投資対象となっているようです。リース取引とは、機械や設備、あるいは飛行機や自動車等の物件を所有する会社が貸手(リース会社)となり、その物件を借手(ユーザー)に対して特定期間貸出す取引です。ユーザーは、使用料をリース会社に支払います。もっとも、これだけ見ると、レンタルとリースの差がわかりません。しかし、レンタル会社は在庫からユーザーの要望に近いものを要望期間(短期から長期まで)貸し出すのに対して、リース会社は、ユーザーからの指定物件を新品で長期契約を結んで貸し出します。更に、リース取引は、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類されます。
ファイナンス・リースでは、様々な動産物件が対象となり、ユーザーが物件購入代金や金利、税金、保険料などのすべての費用を負担します(フルペイアウト)。また、原則としてユーザーはリース期間中に契約の解除ができません(ノンキャンセラブル)。これに対して、オペレーティング・リースは「ファイナンス・リース以外のリース」と定義されることが多くありますが、フルペイアウトやノンキャンセラブルではなく、中古市場性のある物件が対象の取引になります。例えばリース会社は、自己資金と借入金を使って航空機を購入し、その航空機を航空会社などにリースします。その際、リース会社は航空会社からリース料を受け取る一方、借入にかかわる利息の支払いと航空機購入後の減価償却費を費用として計上することになります。
この場合リース料は、リース期間終了時の航空機の中古価格を差し引いて計算されるため、ユーザーである航空会社は割安な価格で飛行機を使用することができるというメリットがあります。また、会計上、オペレーティング・リースは物件の賃貸借取引と認められているため、企業のバランスシートからオフバランス化でき、効率的な経営を行えるというメリットも存在します。
リース会社は、航空機を航空会社に賃貸する場合、一般的に高めのリース料を得ることが出来るうえに、借入れにより利回りがさらに向上します。また、中古市場が整備されていることから、転売による売却益が期待できます。さらに、オペレーティング・リースでは、初期段階の加速度償却が可能であるため、残存簿価を残した購入金額の経費計上を早期に行うことで、節税効果が期待できます。オペレーティング・リースについて、リース業自体は行政への届出などが不要ということで、リース会社の代わりに組合(営業者)が投資家の募集を行い、リース料を収益の源泉とする組合(ファンド)が組成されることがあります。米国では、特に航空機リースをファンド化した事例がよく見られます。ここで、はじめて一般の投資家にリース取引への投資機会が生まれることになります。
但し、オフショアでファンド化した場合などには、前述の節税メリットは原則として活用できないと思われますので、リース料に加え、中古航空機の仕入れと売却のノウハウが投資収益の源泉となります。私たちがファンドを調査する際にも、飛行機の機体だけでなく、エンジンの寿命について、あるいは中古市場の実態を見る必要があります。先日調査をした米国の運用会社は、中古航空機を解体してパーツ毎に売却することで、完成品の市場価値よりも高い利益を上げるノウハウを確立していました。様々な収益機会が存在する中で、ニッチに特化した運用会社と出会うことはこの業務の醍醐味の一つといえます。