あいざわアセットマネジメント株式会社役職員ブログ

第189回  < 中国ヘッジファンドの成長 >

当社が中国関連のヘッジファンドに投資を始めてから8年以上が経ちます。当時、中国株式投資を行うファンドの数は限定的で、ましてやヘッジファンドとなると投資候補となる母集団は相当に小さいものでした。運用内容としても、香港証券取引所上場のいわゆる香港H株に投資を行うファンドが中心でした。国内個人投資家の取引によって流動性があり歪みも大きい、したがって収益機会も豊富な本土の上海等の証券取引所上場のA株に投資を行うためには適格外国機関投資家として認められる必要があり、投資家にとっての選択肢は限られたものになっていました。特に、中国株式市場が大きく上昇していた2007年10月までに、「ヘッジファンド」としてA株の上昇を享受できたグローバルの運用会社の数は非常に限られていました。

2007年10月16日をピークにして、A株の価格は2008年末までに約7割も下落しました。もっとも、2005年末時点からピークを付ける22か月間で株価は4.5倍以上に上昇しており、この間異常ともいえる株価変動率を経験したことになります。この状況は、中国企業の多くが国有企業であったことに起因していました。当時、市場で取引されていた「流通株」と国や法人の持ち分であった「非流通株」が混在し、一株二価の状態であった特殊な状況を是正するための「株式分置改革」の実行に伴った混乱であったと言われています。このような痛みを伴う政策の実行はあったものの、いまだに中国の国有企業の数は多く、中国企業の2割以上に上るうえ、銀行などの重要な産業になるほどその比率は高いのが現状です。

我々が目にする中国株式に投資を行うヘッジファンドの質が高くなってきたと感じるようになったのはこの1-2年のことだと思います。これまでは、ヘッジファンドとは名ばかりの買い持ち中心のファンドや、香港H株や台湾株などの外資系運用会社でも取り扱いやすい株式のロングショート戦略をシンガポール、香港や欧米で経験を積んだ運用者が取引するケースが大半でした。しかし、ここにきて中国本土を拠点にしてリサーチ能力の高い運用者がポートフォリオ管理にも熟練しはじめたという印象です。同じことは2008年以降、急速に質の上がった日本株のロングショート戦略の運用者にも言えると思いますが、非常に厳しい相場環境が結果的に運用者を鍛えてきたという側面がうかがえます。中国の場合も、2006年から2008年にかけての急騰後の急落を経験した運用者が、生き残るためにポジション管理に習熟した結果かもしれません。

中国をはじめとする新興国株式市場の低迷から、多くのメディアが中国バブルの崩壊を懸念する報道を行っています。理財商品に代表される「シャドーバンキング」問題はサブプライム問題を彷彿させ、人々の不安を煽るものです。極端な経済格差や、今後急速に進む高齢化問題など、懸念をあげれば枚挙に暇はありません。一方、質と量の面で成長基調にある中国のヘッジファンド運用戦略の観点から見れば、今後の市場には収益機会が多く存在していると見ることもできます。特に、中国政府は低迷してきた景気に対するテコ入れを意図して、あらためて規制緩和による民間企業の活性化を行いはじめました。この規制緩和には現在問題の中心にあるといわれている金融セクターへの民間企業の参入を促す内容も含まれているようです。多少の景気の振れはあるものの、悪く見積もっても4%、公表では7%以上の高いGDP成長率を誇る中国の巨大な市場が今後も多くの投資家に開放されることを考えれば、この分野での投資機会について、これまで以上に真剣に取り組む必要があると感じています。

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