2006年10月に金融財政事情研究会から出版された「投資ファンドのすべて」という本を当時共著で執筆させていただきました。今回、全面改訂の機会を頂戴し、内容を大幅に書き直しています。あらためて当時の本を読み直してみると、7年の間にだいぶ投資ファンドを取り巻く環境は変わったな、と感じます。同時に、稚拙な中身や表現などを発見し、当時の読者の方に申し訳なく、恥ずかしい気持ちにもなっています。どうしても時間の制約があるために、今回の書き直しも万全なものとはとてもいえない仕上がりになると思いますが、当時の内容に比べれば、少しは充実するのではないかと思います。
元来、文章を書くことは私にとって苦痛な作業ではないのですが、仕上がったものを読み直すのは、自分の姿を鏡で見るようで、あまり楽しいものではありませんでした。なんとなく粗さばかりが目立ってしまい、自分のダメなところを突きつけられるような感覚を持ってしまうせいかもしれません。しかし、先日ある売れっ子作家の方が、推敲はすればするほど良いものが書ける、さらに、その推敲のプロセスが楽しいので、時間の制約がなければいつまでも続けていたいという趣旨のコメントをしていました。比べることも僭越で、かつ当たり前のことではありますが、何度も読み返すことで間違いも発見できますし、粗さを削れば読みやすくなります。このプロセスを楽しむのは、専門書では少し難しいかもしれませんが、読んでくださる方のためにも重要なことだと思います。
そんなわけで、このところ自分の書いた文章とにらめっこをする機会が増えています。主な書き直しの内容は、最近の投資ファンドを取り巻く環境が大きく変わっていることに起因しています。まず、投資ファンドが新聞やメディアで取り上げられる機会が増えたことで、当時に比べてファンドに対する認知度は上がったと思います。一方、マドフやAIJ事件のようなファンドにかかわる大型の詐欺事件が発生したことやインサイダー取引の問題が生じたことで、規制当局や人々のファンドに対する厳しい見方も出てきました。同時に、前回のコラムでも触れていますが、ヘッジファンドも個人投資家を中心とした公募投資信託型での販売が増加傾向にあり、もはやかつてのような特殊な投資ファンドではなく、多くの投資家にとって身近な、投資手法の一形態にすぎない存在になりつつあります。その流れに沿って、今回の本の中でも投資信託に関する記述を増やし、ヘッジファンドとの関連性の説明を加えています。
米国では約14兆ドル(1,400兆円)、日本では1951年に最初の法律が制定されて以来116兆円の運用規模にまで成長した投資信託の市場と、過去20年程度で全世界で200兆円を超える規模にまで成長したヘッジファンド的な運用戦略が融合する状況は、私が1995年に初めてヘッジファンド投資に携わって以来、思い描いてきた世界でもあります。普通の投資家が普通にヘッジファンド的な戦略を選んで投資ができれば、投資の選択肢が格段に広がり、個人、家計の資産保全、形成の観点からも大きなメリットのあることだと考えています。そんな思いを持ちながら原稿に向かうと、推敲のプロセスを徐々に楽しめるようになってきました。今週末の締め切りに向けて、もうひと頑張りしてみようと思います。