2013年最初の海外出張は、短期のアジアでした。当社のビジネスパートナーのいるシンガポール訪問と、運用会社調査のための香港訪問をあわせて短期で行なったため、かなり慌しい日程となりました。今回は、仕事の話を少し離れて、二つの都市に訪問を始めて20数年になる筆者の両都市の感想を少しお話したいと思います。とりとめのないコラムになりますこと、予めお詫び申し上げます。
今回のシンガポールでの滞在時間約12時間、今は雨季の後半ということもあり、ほとんど雨が降っていましたが、過ごしやすい気温でした。夜中1時に到着したのですが、流石に24時間空港、人影もそれなりにありました。シンガポールのチャンギ空港は、1981年のオープンということですが、ここ10年以上、来るたびに、どこかで大掛かりな改装工事を行なっていたという印象を受けていましたが、今回は見渡す限りでは工事中の部分もなく、すっかり綺麗で使いやすくなったという印象でした。この国際空港の特徴は、いつも出入国がとてもスムーズということです。例えば、出国の際には荷物検査を搭乗直前に行なうというものです。空港内部の保安面に少々目をつぶれば、この方法は効率的だな、と常々感心しています。
香港は晴れており、気温も25度程度と申し分なかったのですが、シンガポールや東京に比べると空気が悪い印象を受けます。もっとも、一時期に比べて中心部の建設ラッシュは落ち着いたように感じ、その分環境も改善したようにも思えます。空港についてもターミナルが巨大な香港空港は1998年に開港しました。その前は、覚えていらっしゃる方も多いと思いますが、九龍にあり、ビルの間をすり抜けて離着陸をするスリルを味わっていました。現在の空港は、聞いたところギネス公認の世界一高価な空港ということで、その施設は壮麗です。多少搭乗までの移動距離が長いのが難点ですが、この空港も居るだけでワクワクするようなデザインに仕上がっています。
今回は2日で二つの都市ということで、あまりゆっくりと市内を歩く時間はありませんでした。ただ、どちらの都市も一昔前に比べて交通インフラ、宿泊インフラ、サービスの質、レストランの質などは格段に高くなっています。もちろん、要所を見れば、まだまだ東京のインフラ、サービスの方が十二分に高いのですが、少なくとも、都市部において、ほとんどの場所は東京にも見劣りしなくなっており、新しいビルも多いことから、とても近代的な印象を受けますし、活気があります。シンガポールのマリーナベイ・サンズに代表される新名所も大勢の人で賑わっています。
施設の面で言えば、空港から市内へのアクセスは二都市とも、もともと良かったのですが、市内での地下鉄の利用が便利になっています。各駅から主要オフィスビルへのアクセスも非常に優れています。宿泊施設については、観光都市の側面もある2都市のインフラ、サービスは日々向上している印象を受けます。日本でのサービスに慣れていると当たり前に感じることも多いのですが、欧米を周ってからこの2都市を訪問すると、サービスの質の高さを実感できます。また、香港の一部では異なることもありますが、シンガポールでは特に人々がフレンドリーです。日本では、外人相手となると、初対面の相手と会話が弾むことはあまりありませんが、例えば、シンガポールのタクシーの運転手さんなどは紳士的、かつ明るく饒舌です。
今回もシンガポールでタクシーに乗った際に、かなり会話が弾みました。弾みすぎて、タクシーの運転手さんから尖閣諸島や竹島の問題について根掘り葉掘り聞かれたのは困りました。通常、海外や初対面の相手とは政治問題や宗教問題について語ることは避けるべきだと考えています。先方の考え方によっては思わぬ方向に発展して感情的な衝突すら起こる可能性があるからです。したがって、どうしても相手が話したいときには聞き役に徹することが必要になります。ただ、今回、シンガポール人の運転手さんが、我々「グローバル・シティズン」が国境を意識して争うことは非常に無意味であり、領土問題が歴史的な経緯で解決困難なら、領土や資源を「分け合って」解決するべきだ、と主張したのには思わず頷いてしまいました。私が20数年前にシンガポールに来はじめた当時、日本とシンガポールの間の不幸な歴史を、その当時に幼少時代を過ごした複数のシンガポール人から直接聞く機会がありました。当時の日本の占領軍に対する印象、現在の日本人に対して、非常に成熟した大人の意見を聞くことがでたのは今でも大きな財産です。
二都市に共通しているのは、アジアのハブであり、多様な人種が交差している点です。都市自身から、常に多様であり、新しくあろうとする意思を感じることが出来ます。そこに居る人々も少なからずその影響を受けています。環境が変わることが常であり、自らもその変化を受け入れる準備をしています。多分、世界的に見ても特異な交通、文化の拠点であるこれらの都市に来るたびに、なぜか私は少しホッとして、また、元気になります。