2021年初は、コロナ禍の収束を想定する向きも多く、市場に対して強気なコメントを多く見ました。実際、2021年の1年間を通してみると、S&P500指数が26.9%、ナスダックが21.4%上昇する等、米国株価は大きく上昇しました。一方、国内ではトピックスが10.4%上昇しましたが、マザーズ指数は年後半にかけて値を下げたことで通年では17.4%の下落となりました。米国株式は、米国連邦準備制度理事会(FRB)によるテーパリングの発表を受けても、堅調を維持して2021年を終えましたが、2022年はどのような状況が想定されるのでしょか。
昨年の状況を踏まえて、今年の市場について考えてみたいと思います。
【1】 クレジット戦略ですが、2021年通年をみると、2020年3月に起きたような大きなスプレッド上昇がみられることはなく、低位安定の1年となりました。中国における恒大集団のドル建て社債の債務不履行やFRBにおけるテーパリングの発表といった問題が見られたものの、2020年のコロナ禍によるデフォルト率上昇から一転、2021年は各国での財政出動によるセーフティネットの支えもあり、デフォルト率は低下を続き、結果的に米国のハイイールド債は好調なパフォーマンスを達成しました。歴史的に見ても極端に低位なデフォルト率状況を鑑みると、2022年に同様のパフォーマンスを維持することは難しいものと思われます。とはいえ、コロナ後の景気回復に支えられ、デフォルト率の急増も考えにくく、クレジット戦略からは引き続き、ややプラスのパフォーマンスが期待できると考えます。
【2】 商品市場については、2021年のWTI原油価格は、コロナによって停滞していた経済活動の再開によってエネルギー需要が拡大したのに対し、産油国での供給が抑制されていたこともあり、大きく値を上げました。原油価格に限らず、石炭や天然ガスにも同様の動きがあり、特に天然ガス価格は一時年初から3倍近い値を付けました。エネルギー価格の上昇は実需に対する供給量の逼迫によるもので、米国の短期的なインフレ率上昇に寄与しています。この傾向は、生産量の増加とともに落ち着くものとは思われますが、昨今急速に高まる、社会からのESGへの要請が化石燃料生産の圧縮へとつながっている側面もあり、2022年も継続するものと考えられます。エネルギー関連価格は堅調に推移し、また、コロナ後の消費増に結びつく原材料価格や農産品価格の上昇が想定されます。
【3】 金利については、米国FRBのテーパリング開始によって短期金利は上昇しているものの、10年国債金利などの長期金利は低位安定傾向にあります。足下で1.75%を超えてきたものの、近い将来に対する景気先行き不安感も漂うことから、急激な上昇には結びにくいものと思われます。とはいえ、政策金利の上昇にあわせて米国10年金利は、2022年末にかけて1.5%から緩やかに2.5%程度に向かっていくものと思われます。日本国内でも徐々にイールドカーブコントロールの弊害や限界が議論されることから、0%から0.15%で抑えられていた10年債利回りがレンジの上限を抜け、0.25%を超えることも考えられます。
【4】 エマージング市場は、コロナ禍の収束に先んじて堅調に推移しました。中国では、コロナ禍の収束が他国に対して早かったことから2021年初は好調な出足となりましたが、恒大集団の債務不履行に代表される不動産関連ビジネスの不良債権化や、習近平政権による規制強化と米国との対立が足かせになり、年末にかけて株価は横ばい推移となりました。2022年に入っても中国における状況は改善するとは見られず、株価にとってはマイナス要因が多いことから10%程度の下落も想定されます。一方、東南アジアを中心に中国周辺国では、世界景気の回復による世界の工場としての役割が増加し、また、金融市場自体が成長することから、インドネシア、ベトナム等に代表される国々の企業株価の上昇が見込まれます。
【5】 2021年の市場の変動率VIX指数は、堅調な米国株式市場を背景に14.1から37.5と、2020年に比べると安定したものの、それ以前に比べると比較的高い水準で推移しました。2022年については、米国の金利上昇の影響を受けて、2021年同様、15から40程度とやや高めの水準での推移を想定しています。
【6】 最後に、2021年の日本株式市場は、コロナ禍の最悪期から脱した業種の反転もあり、また、財務的には健全な状況を保っている企業が多いことで総じて堅調となりました。しかし、中央銀行や海外勢の買いが絞られてきたことから需給が徐々悪化したこと、また、中国の不良債権、景気鈍化懸念におされて株価の上昇幅は限られたものになりました。トピックスこそ10.4%の上昇となりましたが、値嵩株の多かったマザーズ市場は17.4%の下落となりました。2022年の日本株市場は、米国金利上昇、中国不良債権問題への懸念などがある一方、買い手が不在となる中、需給の悪化が想定されます。もっとも企業業績に大きな変化が見られない中では、大幅な相場下落にはつながりにくく、通年では横ばいの展開を想定します。
中国の恒大集団問題は今後大きな波及効果を持つ不良債権拡大の初期かもしれませんし、グローバル市場にも思わぬ波及効果がある可能性もあります。それ以外にも、ウクライナ情勢の悪化や、トルコなどの新興国市場発の金融市場の混乱も考えられます。上記のような基本的な市場への見方の下、長期の相場上昇期に出始める金融危機の予兆も見逃さないようにしたいとも思っています。
2022年の干支は、「壬寅(みずのえ・とら)」は、「生まれたものが成長する」という縁起のよい意味をもつようです。私たち「あいざわアセットマネジメント」は、昨年2月に会社合併し、飛躍のための準備を行いました。今年は新しいファンドの設定を行い、皆様のご支援を賜りながら成長、発展を期しています。
本年も何卒よろしくお願いいたします。皆様のご健康とご多幸を心からお祈り申し上げます。