中国の2022年10月から12月の実質GDP成長率は前期比年率0.0%、2022年通年では3.0%成長と政府目標の5.5%成長を大きく下回る結果となりました。この低迷を分析すると、ゼロコロナ政策による活動制限が個人消費を押し下げたこと、特に欧米向けの輸出の大幅な落ち込み、不動産開発の鈍化で説明がつきます。今年に入ってゼロコロナ政策が緩和されたことで、個人消費は回復が見込まれます。また、中国国内での内需回復を見込んで、海外からの対中投資の改善は進むものと思われます。しかし、サプライチェーンの分断が継続していることや、米国による輸入抑制が継続するため、輸出の回復は限定的であり、構造的な問題から不動産市場は引き続き低迷する可能性が高いと思われます。日本では、コロナに関わる政策の変換に伴って、中国経済の一定の回復は見込めるものの、コロナ前の状況に戻ることは難しいものと見る向きが多いようです。
とはいえ、世界第2位の経済大国である隣国、中国の経済関連政策や中国からの資金の流れが、日本に及ぼす影響は大きいものがあります。実際、コロナ禍でも、中国の財閥や富裕層による日本への投資は継続しており、特に、不動産、日本企業への投資意欲が増しているように感じます。これは、中国国内不動産価格の先行き不透明が高まっていること、これまでの投資先であった米国への投資が難しくなったことなどが理由になり、行き場を失った資金が日本に流れ込んでいるという側面があります。今年に入り、中国系企業や富裕層からの知人を介したコンタクトが増えており、日本への投資に対する興味の高さが伺えます。
今週、上海拠点の中堅の財閥系の投資家が日本に来訪した折に当社に立ち寄りました。情報交換する中で、いくつか面白い話も聞くことが出来ました。中国では昨年12月にコロナ関連の政策が180度転換して以降、人口の80%がコロナに罹患したと言われ、その後から、まわりでコロナにかかったという話は一切聞かなくなったということです。現在では、マスクをする人がいなくなったことは勿論、コロナの話すら聞かなくなり、生活は完全にコロナ前に戻り、レストラン、ホテルは予約の取れない状況が続いているとの話でした。したがって、その投資家は上海、中国全土の景気回復に強い自信を覗かせていました。
一方、中米関係の回復については全く不透明であると思っており、これまで行ってきた米国企業への投資が難しくなっている状況について嘆いていました。その結果、日本に対する投資を増やしており、今回も日本のテクノスポーツという新しい分野を開拓しているベンチャー企業への出資後の視察を兼ねて訪日していました。この傾向は当面続くものと思われ、中国からの投資、中国への投資の流れが増えるという前提で物事を考える必要性を感じています。