2023年5月中旬から下旬の2週間の出張の後半は、ニューヨーク、ボストン、サンフランシスコを訪問しました。3年ぶりの米国でしたが、ニューヨークの街並みや人の多さにコロナ禍の名残は全く見られないように感じました。今回、米国コーネル大学がマンハッタンに所有する宿泊施設に滞在しましたが、大変便利な場所にあり、また使い勝手の良い施設でしたので、再度訪問したいと思っています。ニューヨークでは、当社ファンドの既存投資家やビジネスパートナーとのミーティングが中心でしたが、いくつか興味深い話も聞けました。
現在、米国機関投資家は、中国への投資を抑制する方向にあります。長引く米中貿易摩擦、地政学リスクの高まり、中国経済の成長鈍化シナリオへの不安等、様々な要因が高まったことで、中国株式、不動産等の投資を積み増さない、もしくは減少すると考えている投資家が多いという印象を受けました。さらに、中国投資の代替としては、まず、アセアン圏内で比較的リスクの低い先進国、つまり日本とオーストラリアを最初の受け皿として検討しているとのことです。
一方、プライベートアセットに対する投資については、そもそも低流動性資産であることに加えて、2022年以降、米国を中心としてIPO数が減少するなどで投資資金の回収が遅れており、新規のプライベートアセット関連の投資が停滞しいる状況が伺えました。一方、一部のスタートアップ企業の株価が大きく調整したことを受けて、VC投資については厳しい見方をしている投資家が増えた印象を受けました。
その後、ボストンに移動しましたが、ちょうど米国大手バイアウトファンドの年次総会があったことで、世界中から総会参加のために機関投資家が集まっていました。いくつかの大手ファミリーオフィスや大学基金の担当者との面談を行いましたが、ニューヨークで受けた印象と同様、中国投資に対する懸念と代替投資先としての日本についての話がありました。特に日本の投資対象としては、割安でコーポレートガバナンスの改善が見込める上場株式、及び不動産とバイアウト投資に目が向いているようでした。
最後に訪問したサンフランシスコでは、ダウンタウンの治安が非常に悪化しているのを目の当たりにして驚きました。目抜き通りも活気は少なく、一方、ホームレスと思われる人が多く、一言でいえば雰囲気が悪い状況でした。しかも、有名ホテルが並んでいるような観光客向けの場所でさえ、一人で出歩くのも憚られるような状況です。聞くところによると、カリフォルニア州政府は被害額が950ドル以下の窃盗などの犯罪については「軽犯罪」として、逮捕しても即釈放する等、取り締まりコストを削減したことも影響しているとのことでした。
一方、サンフランシスコ在住の投資担当者と面談した場所は、今は観光地となっているアルカトラズ島を望める新しいレストランがあり、近隣の高級住宅街は手入れが行き届いているようです。さして広くない市内でも大きな格差が見て取れます。最近の新聞記事にもありましたが、アメリカ内でも都市によってコロナ後のオフィス空室率が大きく変化しましたが、サンフランシスコは特に空室率が大幅に増加したようです。
今回の出張を通じて、コロナ後の英国、米国の状況の一端を見ることが出来ました。10年以上続いた好景気のサイクルに変調の兆しが見られる昨今、あらためて見聞を広めながら更なる変化に備える必要がありそうです。