第259回 < 国際協力機構(JICA)の活動 >
南米出身の友人が運営する中南米向けの再生可能エネルギー関連インフラファンドに日本の国際協力機構(JICA)が出資を行っています。JICAは、青年海外協力隊を組織し派遣したり、開発途上国向けに技術協力、無償・有償資金協力を通じた政府開発援助(ODA)を行う母体ですが、その実態は広くは知られていないかもしれません。日本は、1991年から2000年まで、世界一のODA実績を誇りましたが、現在は、米国、英国、ドイツ、フランスに次ぐ世界5位となっています。それでも、JICAの総資産は約11兆円に及び、その大半は開発途上国向けの貸付です(国際協力機構 2015 年次報告書より)。
その活動、協力対象地域は多岐にわたります。かつては、途上国の貧困削減や安全の向上が中心でした。もちろん、今でも途上国の公正な成長や貧困削減はJICAの大事な使命ですが、それ以上に、グローバル化の進展に伴う富の偏在化や国境を超えた気候変動問題、テロ、経済危機、感染症等が途上国における脅威として認識され、地球温暖化問題への取組みなどもJICAの重要な使命となっています。活動の多角化に伴い、様々なノウハウが必要とされる中、民間との協力が求められています。また、ほとんどの資金協力は貸付によって行われていますが、民間ファンドへの出資を通じての協力も可能となっています。
友人の運用するファンドは、中南米の省エネ、再生可能エネルギー関係のインフラ施設の開発を中心に行います。このファンドは、日本メーカーの製品や技術を活用して途上国のインフラ開発を行うのが特徴であり、JICAが出資協力を行うポイントにもなっています。このほかにも、米州開発銀行やドイツ開発公社等の公的資金がファンドに入っていますが、各先進国の政府、公的機関がいかに気候変動関連に問題意識を持っているかの表れだと思います。
JICAの取組みの特徴は、その名が示す通り、その支援が海外にのみ向けられる点にあります。したがって、国内の公的機関の中でも最もグローバル化に目を向けている組織でもあると思います。また、その役職員の多くも何らかの形で海外経験をされた方々です。日本はグローバル化のさなかにあり、その流れは続いていくものだと思われます。JICAが海外支援を通じて蓄積してきたノウハウは貴重なものであり、今後の日本の投融資のあり方に活用できるものが沢山あるのではないかと感じています。