第234回 < 夏休みの自由研究 >
7月中旬の英Financial Timesに出ていた記事が気になりました。日本の空き家が800万戸を超え、昨年は人口が27万人以上減少し、この傾向が続きまだまだ空き家が増えると想定される中、空き家買取りビジネスに焦点を当てる記事でした。また、コンパクトシティへの流れの中で、都市部周辺の治安について不安視する内容も含まれていました。たしかに、最近周辺の空き家が目につくようになりました。2013年時点での空き家が820万戸で、空き家率が13.5%とのことです。1970年に5%程度だったのが、人口が増加しながらも上昇した空き家率は、今後、人口が減少し、総世帯数も減少する中で2023年には空き家率が21%に達するという予測もあるようです(野村総合研究所調べ)。この場合、8年後には、総戸数6,640万戸のうち、1,397万戸が空き家になるという計算になります。
たしかに欧米と比較して日本では新築物件が好まれ、周囲を見回しても常に新築住戸が建設中です。FTの記事の中には、住宅販売の内、欧米では90%が中古物件なのに対し、日本では15%でしかない、との指摘もありました。この記事を読んで、今年の夏は、空き家を調べてみることにしました。「空き家」には、「売却用」、「賃貸用」、「二次的住宅(別荘等)」、「その他」の4種類が存在します。この中で、特に社会的問題になりやすいのは、買い手も売り手も存在しない、相続などの結果、ほとんど手つかずになっている「その他」空き家ということです。2013年には、13.5%のうち39%、つまり、全住戸の5.3%がここに分類されます。既に全戸で20軒に1軒がこのタイプの空き家となっています。もっとも、東京ではぐっと少なく、50軒に1軒に留まります。しかし、東京の空き家の内73%を占める「賃貸用」に分類されていても、空室率の高い物件が増加しているため、潜在的には「その他」物件は多いようです。
日本では、2013年度には99万戸の住宅が新築され、いまなお供給が旺盛です。イギリスの空き家率3-4%、ドイツの1%前後と比較すると、ダントツの空き家率です。米国では8-10%と比較的高いものの、当面は日本のような増加傾向は考えられませんし、国土の広大さを考えれば比較が難しいかもしれません。日本の各地方自治体では、空き家の増加による治安、衛生の問題が顕在化しているため、徐々に撤去費の補助や固定資産税の優遇の仕組みを提供していますが、非常に限られた範囲で、金額も微々たるものです。
この状況を鑑みるに、今後は民間による中古市場の整備と流通促進が求められるものと思われます。私も、今回の勉強を通じて、まずは都心の身近な「空き家」マップを作りながら、今後の「空き家」事情に注目してみようと思っています。これまで、日本の住宅供給過剰を漠然とした不安として感じていましたが、数値を見ると、これは「いまそこにある危機」だと認識できました。しかも、今後10年程度でも大きな変化の可能性のある分野です。更に将来の自分の子供たちの世代の治安や衛生を考えれば、他人事とも思えません。まずは調査を始め、解決策について思いを巡らせたいと思います。