第218回  < 大学での講義について >

個人的には大変ありがたいことに、20年以上金融業界に携わり、その大半がヘッジファンドやPEファンドを中心とした投資ファンドと関わらせていただくことができました。まだまだ、分からないことも多く、これからも業務を通じて勉強を続けたいと思っています。一方、これまで様々な皆様に教えていただき、支えられながら業務を続けてくることが出来たという思いも強く、機会を頂戴できれば、これまでの経験や知識や人脈をできるだけ社内外や業界内外にお伝えし、広げていきたいと常々考えています。いくつかの企業、団体、大学院での講義をお受けして、お話をする機会がありましたが、最近、ご依頼を頂いて大学での2年生から4年生の方をお相手に講義をさせていただくことがありました。

当時を振り返って、自らの学生時代の受講態度を思い出せば、最近の学部生の方は非常にしっかりしているという印象を持ちました。また、講義内容が金融の特定分野ということも大きいかと思いますが、特に3年生以降にもなれば、かなり目的意識の高い学生の方が多いように思います。そのような場で、運用、投資信託、ヘッジファンド、PEファンド等の投資ファンドについて話すわけですが、話すことで、あるいは説明することで自分の理解が深まることが多いことに驚かされます。この分野のことは、結構長い時間をかけて勉強してきたつもりでした。また、実務も長年積んできているので、話をすることにあまり躊躇や戸惑いはないのですが、いざ、学部生の方に興味を持って聞いてもらおうと思うと、かなり困ることがありました。

まず、受講される方が圧倒的に若いのです。みなさん、当然ですが20歳そこそこですので、1997年のアジア通貨危機や1998年のロシア危機、LTCM破綻等の時期はまだ幼稚園児なわけです。これが、社会人相手であれば、このような背景を共有しているので、話が楽になります。それが、学生の皆さんにこの話をすると、完全に歴史の話になってしまい、話にリアリティを持たせることが難しくなったりします。こうなると、歴史の浅いヘッジファンド関連の話であっても、ある程度普遍的な話をする必要が出てきます。投資戦略、運用手法の内容や、ファンドの仕組みや、投資家、市場での行動を話すことになります。しかし、戦略や仕組みの話というのは、よほど興味を持っている人でないと聞いていて面白いものではないような気がします。

ここで思い出したのが、自分が過去に受け、興味を持った授業の内容でした。大学院、大学から小学校まで遡り、自分がどのような先生のどのような授業に興味を持ったのかを考えてみると、やはり、授業中であっても聞くだけではなく、自分の頭で考えるように仕向けてくれる授業が頭に残っていました。移動中の新幹線などでいくつか、専門的ではあっても答えやすいような比較的簡単な問題を考え、授業中に皆さんに挙手をお願いし、正解は授業の中で次第に明らかにしていくというアプローチも考えました。

あらためて、様々な角度から投資ファンドや運用手法を眺めていると、これまで自分がなんとなく見逃していた点や忘れていたことが見えてくるようになります。人に教えることは自分が学ぶことだということは、月並みな言葉で頭では分かっていましたが、社会人向けの講義ではなく、学部生向けの講義だからこそ気づく点が多かったのは今回の経験の収穫でした。講義を通じて、少しでも多くの方がこの分野に興味を持ち、日本の金融業を支える人になっていただければと念じています。