第212回  < アクティビスト投資、ガバナンス投資、あるいはヘッジファンド >

日本株に対する海外投資家の興味が近来になく高まっていると本コラムでも述べてきました(第205回 バリュー投資について)。一方、日本版スチュワードシップコードの導入に見られるように、企業の持続的成長には、機関投資家が投資対象企業に対して、深い理解を持ったうえで、建設的な目的を持った対話などを通じて、責任のある行動をすることが求められるようになってきました。

これまで、どちらかといえば敬遠されてきた感のある、「モノ言う投資家」が歓迎されるとは限らないものの、受け容れられやすい環境が整ってきたとも言えます。しかし、スティールパートナーズや村上ファンド等の企業に対するアプローチが社会から敵視されていた時から、まだ7年程度の月日しか流れていません。その間にいったい何が起こったのでしょうか?企業の経営者の視点から少し考えてみたいと思います。

上場企業の経営者は、外部、内部からの様々なプレッシャーに晒される立場にあります。業績の向上、商品・サービスの質の向上、雇用の確保を求められ、自社の株価にも責任を負う立場にあります。これらを達成できない場合はもちろん、突発的な事故やイベントに際して、対応を誤れば、内外からのクレーム処理や、結果に対する対応責任を負うことにもなります。これらの責任を追及する人が、周囲に少ないほど経営者は気が楽かもしれません。これまで、オーナー経営者の多かった日本の企業においては、社外取締役や監査役を外部から招聘することが少なく、ましてや、「モノ言う投資家」が外国人や攻撃的な投資家であるなど、最も避けたい状況であったと思われます。

しかし、近年、コーポレートガバナンスの重要性が認識され、オーナー企業も経営者の世代交代が進んできました。新しい世代の経営者は、むしろ代表的な投資家の意見を聞きたいと思い、また、第三者の観点から会社がどのように見られているのか、また、自分の経営方針や手法に対するアドバイスを求めるようになってきたと思われます。これまで敬遠されてきた、「モノ言う投資家」も実態が広く認知されるようになり、もちろん例外はありますが、多くの外国人投資家やアクティビスト投資家といわれる人々も長期的な「友好的」アプローチを採っているケースがあることも知られるようになりました。

現在、国内の上場企業は3,500社以上あります。日本取締役協会によれば、外国人株主比率が10%以下の会社では、社外取締役を採用していないケースが50%を超え、1人以下という会社は80%という状況です。一方、外国人株主比率が30%を超えている会社では、社外取締役を2名以上採用している会社が55%に及んでいます。株主(投資家)構成の種類と会社のガバナンスの在り方には、高い相関がみられる一例だと思います。これらの外国人投資家の中には、自らを「アクティビスト」あるいは「ヘッジファンド」と定義されることをひどく嫌うところが多くあります。言葉のイメージの問題でしょうが、たしかに経営者の観点から、長期の「ガバナンス投資」によるコミットがあるのと、「アクティビスト」「ヘッジファンド」が株主に居座られるのでは大違いに感じられると思います。呼称の問題だけだという気もするのですが、これから、様々な実例を目にする機会がある中で、見極めていきたいと思います。