第179回 < 再生可能エネルギーへの投資機会(1) >
現在、国内で再生可能エネルギーの9割を占めており、投資家の投資対象となりえるのは太陽光発電関連になります。「全量固定価格買取り制度」の制定以降、全国各地での「メガソーラー」建造が急速に進んでいます。中には数万戸の年間電力を賄う規模の数十万メガワット規模の発電施設の建設も進んでいます。資産運用会社の中には、大手商社と手を組んで、企業年金向けに複数のメガソーラーを組込んだファンドの資金募集を行なったケースも見られるようになりました。これまでのコラムでも触れてきたように、私達はオルタナティブ投資の一環として、エネルギー関連の投資機会を見てきました。ここにきて、ようやく再生可能エネルギー関連への一般投資家からの投資が現実味を帯びてきたと考えています。
「全量固定価格買取り制度」に決められた価格が、当初高めの42円/kwに設定されたこともあり、「メガソーラー」施設は、早期に投資を開始できる投資家にとっては収益性の高い投資対象となっています。一方で、20年に及ぶ投資期間や、まったく新しい投資分野ということがネックになり、運用商品としての普及のスピードは今のところ早くありません。しかし、投資家の裾野は徐々に広がりつつあり、実際に様々な投資家層が既に投資を開始しています。今回は、私達が見ている国内メガソーラーへの投資状況を少し述べてみたいと思います。
当初、メガソーラーの開発、建設に着手したのは、電力消費量の多い大手企業でした。それらの企業は将来の電力供給の確保の観点や、再生可能エネルギーの成長を後押しすることによって、社会的責任(CSR)を果たすという観点から初期投資を行っています。彼らは、もちろん運用商品としての観点で投資を行ったわけではなく、事業投資の一環としてメガソーラーへの参入を決めたケースが大半です。また、地域の電気設備会社も、新規ビジネスとしての位置づけで、投資を含めて事業に参入しています。次に、既にメガソーラーにおける「固定価格買取り制度」を経験し、成功体験のあるドイツ、スペイン、イタリア等の欧州の事業会社や投資家が日本の制度開始を機会と捉えて、この分野に参入してきました。特に欧州において、施設の設計、調達、建設を請負ってきた業者(EPC)の多くは、既に収益性の低下した欧州内での事業に見切りを付け、当初高い収益の見込める日本の事業への参入機会をうかがっています。
それ以外に 興味深い国内投資家層として、俗にタックス・インベスターと言われる投資家がメガソーラーへの投資に関心を持ち、実際に投資を始めています。太陽光発電の設備を一括償却できるという減価償却の特例(グリーン投資減税)を活用することで、税金上のメリットを享受することの出来るこれらのタックス・インベスターは、再生可能エネルギー設備の普及を後押しする存在となりつつあります。一方、太陽光発電施設を建設する地元住民からの小口投資を募る、ある種、町興し的な投資家募集も行なわれています。
このように、固定価格買取り制度やグリーン投資減税等の制度上の優遇を総動員することで、太陽光発電設備の建設は、やや過熱気味と思われます。制度上、先行者メリットの大きな投資となっているため、期間限定の経済的なメリットを享受しようとする事業者や投資家が我先にと参入する状況は、当初の再生可能エネルギーの普及を強烈に後押しします。しかし、最終的にはサステイナブル(安定的)なビジネスモデルとはなりえない可能性も高く、副作用を伴います。次回のコラムでは、「メガソーラー」への投資のリスクと、今後の展望について考えてみたいと思います。