第128回 < 香港・スイス・アメリカ出張報告 (2) >
スイスでの滞在は2日間でしたが、幾つかの投資先ファンド運用会社と現地でヘッジファンドやプライベート・エクイティファンドに投資を行う投資家の方々とのミーティングを行いました。今回のミーティングを通じて、米国やアジアの投資家に比べて出遅れていた感のあるスイス拠点の欧州投資家もようやく動き始めたように思えました。但し、投資チームの組織の再編や、投資の仕組みを変えるなど、これまでの投資スタイルの反省が随所にみられたのも特徴です。日本では影響も限定的だったので人々の口に上ることもほとんどありませんが、欧州ではマードフ関連のファンドの痛手が非常に大きく、いまだに尾を引いています。その反動から、従来ファンド投資に対して最も積極的だった投資家層の動きが他に比べて遅かったように思います。
一方、金融当局が運用会社に対する取締りを強化し、また、税率を引き上げるような動きが見られる中、運用者がスイスへ拠点を移すケースも増えました。金融のインフラはもともと備わっている国ですし、安全、清潔、税率も低いとなれば、多少の物価高には目を瞑ってでもスイスに移住する人が増えるのも理解できます。われわれもスイス拠点の運用者のファンドに複数投資を行っているため、度々この地を訪れますが、そのたびにロンドンやパリベースだったファンドが拠点を移してきた話を聞きます。今後、欧州でのヘッジファンド規制が厳しさを増すことになれば、このトレンドはしばらく続くと思われます。
今回の出張では、香港、スイスに続いて米国に渡りましたが、米国ではシカゴ、ニューヨーク、マイアミの順に滞在しました。シカゴでは、当社の運用に協力してもらっているHFR社を訪問し、幾つかビジネスの話をしてきました。その中には、6月中に日本でヘッジファンド会議を共催するという内容もあります。今回は機関投資家の皆様中心の会議を想定していますが、これが成功すれば、先々は個人投資家の皆様にもわれわれが投資しているヘッジファンドの運用会社担当者の講演やパネルディスカッションを聞いていただく機会を設けてみたいと考えています。ニューヨークでは、一日に7つのミーティングを入れましたが、当社が運用するファンドからの投資先、当社との共同事業を検討いただいている方々、投資家など異なる種類の打合せとなりました。投資先と話していて感じたことは、投資環境の先行きについて、足下の好調な環境とは裏腹にかなり控えめな見方を持っているところと、相当強気に転じているところがまちまちだったという点です。
経験則から言えば、複数のミーティングを通じて会う人々の大半が強気の見方を持ち、その確信を高めていくところでは、上昇相場の最終局面が間近を迎えるサイン、あるいは大きなクラッシュが起きる予兆ということがしばしば起きます。今回、保有しているポジションも含めて、そこまで強気の見方一辺倒という雰囲気ではないところだけを見ると、今後数ヶ月から1年近くは株式相場の「回復」が続く可能性もあると思います。実際、多くの投資家が、スプレッドがすでに縮まってしまい、期待収益率も相当落ちているハイイールド債や金利系の投資商品から、流動性もあり、潜在的に高い収益率も見込める株式関連へのシフトを進めている状況が散見されます。その中で、流動性を確保でき、かつ割安とも思える日本株に対して、相応の興味を持っている米国投資家のコメントも聞くことができました。
翌日は猛吹雪が来るという寒い北米都市を離れ、最後の訪問地は冬の気候が温暖なマイアミです。当社で今回買収したコモディティ関連の運用会社が運用する商品先物ファンドにも投資をしてくれている米国投資家も出席する大きなヘッジファンド会議が開催されていました。実に、運用者、投資家合わせて700名が参加する大きなイベントです。ここでは、投資家のヘッジファンドへの資金回帰を実感することができましたが、詳細については次回のコラムで触れたいと思います。