第392回 < 国内ベンチャー企業事情について >
先日、独立系のVCが主催する大規模なベンチャー関連のイベントに参加しました。定期的に開催されるイベントで、スタートアップの起業家が、自社の技術やサービスをプレゼンし、既に成功した起業家や投資家が、その内容を審査する、いわゆる「ピッチイベント」も組み込まれています。それ以外にも多数の方々が参加し、ネットワーキングの場としても使われています。最近のベンチャー事情を知るには非常に有用な場であり、参加させていただいています。
今回のイベントに参加して、起業家の質や、プレゼンテーションの内容が、レベルアップしているという印象を受けました。限られた時間内でのピッチや、審査員からの質問に対する答えについても、しっかりと考えられ、準備された対応で、聴衆によく伝わる内容になっています。また、今の日本人起業家に最も求められている、「グローバル」市場への展開がビジネスモデルに組み込まれており、有望な起業家が多数出ている印象を受けます。
ビジネスモデルやビジョンの中に社会課題を解決が組み込まれていることで、起業家のプレゼンに対して、心から賛同し、ワクワクする気持ちになりました。もっとも、収益計画や将来の展望については、米国の起業家の半ばハッタリの効いたとんでもない数値から見ると、ややおとなしい現実的な内容に感じています。傍観者的な目線で恐縮ながら、粗削りでも良いので、大きく世界を変えるイノベーションを興すピッチを聞いてみたい気がしたことも事実です。
イベントの合間に、新しく知り合った人達と食事などに出かけて、個別にゆっくり話ができるのも、こういった集まりの良いところです。久しぶりに会う、起業家の友人や投資家の方のアップデートや最近の話題をインタラクティブな環境で聞くことで、今、ベンチャーの現場で何が起きているのかを知ることもできます。例えば、エネルギー関係の課題解決を志し、日本で起業して上場を果たした創業者の方からは、日本の構造的な問題について具体的に教えてもらうことができましたし、日本人として海外でも活躍する姿を見せてもらい、大変な刺激になりました。
世界に先駆けて人口オーナス期を経験している日本が、世界の中で存在感を維持するためには、若い世代を中心とした起業家によるイノベーションが連続して起こることが必須と思われます。その素地があってこそ、突然変異的に世界を巻き込んだ大きな変革を興すビジネスが生まれてくるものと考えています。世代的にも、金融ビジネスという業種にしても、私たちの役割は、起業家が自由な発想を持ち、それをビジネス化できるエコシステムを作る一助となることだと理解しています。そのためには、今起きていることを知り、起業家およびその候補の方々と触れ合う必要があることを、今回のイベントを通じて改めて感じました。オルタナティブ資産運用の投資対象先としてもますます存在感を増しているベンチャー投資を通じて、引き続き、多くの起業家や投資家の皆様との交流を続けていこうと思います。