第240 回 < 中国に対する投資家の見方 >
7月、8月の急落相場後、9月以降の中国株式市場がだいぶ落ち着きをみせています。市場参加者の見方も、悲観論一色だった時から少しは変わってきたと言えるのかもしれません。現在の中国経済、中国金融市場に対して、市場はどのように見ており、今後反応するのでしょうか。いくつかの海外投資家や市場関係者から伺ったお話などをもとに想像をめぐらせてみたいと思います。まず、10月26日から4日間にわたって中国で開催された「五中全会」における第13次5か年計画を見てみたいと思います。「イノベーション」「釣り合いのとれた発展(協調)」「環境に配慮した発展」「開放的発展」「ともに享受する発展」が、小康社会の実現にむけて発表された5つの原則でした。
世界最大の人口を誇る中国がインターネット先進国としてIT業界をリードしていくという意気込みが感じられます。最近のオンラインビジネスや、フィンテックにおける中国企業の成長を見れば、競争力のある分野ですので現実味があります。更に、「釣り合いのとれた発展」は、都市と地方の格差の解消を進めつつ、中所得者層を増やし消費を刺激していくという考えに見えます。これまでの箱もの(インフラ)重視の姿勢からの転換が見えます。環境配慮やグローバル志向の発展等を見ても、中国が政治問題を先鋭化させることなく、経済政策を重視したいとの姿勢が伺えるように思えます。
中国経済について、4種類の市場関係者からヒアリングをしてきました。まず、日本国内から中国関連事業への投資を行っている方々です。こちらは、従来型の重厚長大産業に関連した設備投資に関わる事業投資などが含まれるので、全体的に悲観的なトーンは変わっていません。これまで中国経済をけん引してきたインフラ企業の収益はかなり厳しい状況が続くと思われます。一方、ヘッジファンド等をはじめとする中国株式にセレクティブに投資を行う運用者との議論からは、比較的楽観的なコメントを聞くようになりました。市場の混乱時に出てくる割安銘柄には積極的に投資をすすめたい、という話です。もっとも、現時点では持分を軽くしているのも特徴です。次に、米国当局者のコメントとしては、中国投資家及び、中国企業の米国上場について厳しく見ていくという話を聞きます。最後に、日本の中国スペシャリストと話したところ、意見は二分されました。
その中で、説得力のある意見は以下の通りでした。中国経済については、今後も比較的強固な安定した成長を見込んでいるというものです。かいつまんで言えば、中国経済の60%を占める従来型のオールドエコノミーがゼロ成長だとしても、40%以上を占めることになるニューエコノミーの成長率が高く、約15%だと考えれば、ならして6%以上の経済成長が見込める、という発想です。加えて、中国の財政基盤は極めて健全であるため、通貨政策のかじ取りもしやすく、金融市場での混乱は起きにくいという考え方です。もちろん、不動産バブルや不良債権の増加などの問題を抱えていますので、バラ色のシナリオは描けませんが、市場の悲観論は少し偏った見方なのかもしれません。
日本経済や今後のグローバル金融市場に大きな影響を与える中国の経済動向について、引き続き注目していきたいと思います。