第222回 < 香港における国際会議の舞台裏 >

1月下旬に香港出張した折に、本コラムでもお話ししたことのある、AIMA(Alternative Investment Management Association) 主催の会議に参加しました。主に、ロンドン、香港の拠点における同僚たちが、数ヶ月かけて準備してきたこともあり、内容も充実しており、多くの参加者においでいただくことが出来ました。香港の規制当局者や、取引所の会長をはじめ役職員の方々、アジア各地に拠点を置く運用会社、投資家、法律事務所、会計事務所のメンバーなど、多様な顔ぶれの中、当局者や運用会社、投資家によるスピーチやパネルディスカッションが催されました。私の参加したパネルでは、アジアの金融ハブ(特に、香港、シンガポール、日本)における投資に関する規制や制約について、投資家の観点で議論を行いました。

出席者の興味を引く質問を各種用意し、また、会議が間延びしないように工夫をし、スピーカーやパネリストの話すトピックを1か月以上前から相談するなど、現地で顔を合わせることのできない関係者は、複数回メールや電話で打ち合わせをする必要がありました。私たちも日本国内で、同様の国際会議を開催した経験を持っていますが、 毎回、準備を行うスタッフの苦労には頭が下がる思いです。同組織が非営利団体であることから、準備をするメンバーもボランティアでの参加者も多数います。

参加者の顔ぶれを見てみると、よく知られる大企業から出席される方が多数います。直接、運用等の金融業界に関係のある投資銀行、大手運用会社がスポンサー企業として宣伝効果を求めるのは当然と思われますが、実は例年もっともスポンサーや協賛企業として名乗りを上げてくる業界は、法律事務所及び会計事務所になります。運用会社や金融機関では、近年さらにコンプライアンスの重要性が増してきており、法律関係のコストが増加しています。また、企業のグローバル化が進み、国際税務処理が頻繁に行われること、さらには各国での課税状況もめまぐるしく変化していることから、企業が会計事務所に依頼をする案件も相当増えているようです。奇しくも、前日に同じ会場でアジア・プライベートエクイティフォーラムが開催されました。ヘッジファンド関連とプライベートエクイティ関連の参加者は似て非なるもので、あまり重複は見られないのですが、弁護士事務所、会計士事務所は例外です。

このような会議の開催をお手伝いする側でいつも新鮮な気持ちになるのは、並み居る大企業が混じって、多くのスタートアップ企業からの参加が見られることです。今回も、アジアを拠点として新たにスタートした金融会社からの参加者も多く見られました。特に、香港、中国本土からはこのような参加者が多く見られました。年々痛感することですが、上海、北京を拠点とする新興企業の若手経営者や幹部は、本当に流暢な英語を話し、国際感覚に長けてきています。いまでもそうですが、今後さらに中国人起業家が国際舞台で大きな役割を果たしていくことは間違いないように思われます。また、特に上海等の沿海部出身者や北京などの大都市出身の若い世代は日本に対する憧れや親しみを持っていることも特徴です。今後、中国という大きなマーケットに日本企業があらためて進出し、事業提携等する際には、このような新興企業とのコラボレーションが重要になるのではないかと感じています。