第175回 < 伝統的資産とオルタナティブ資産の融合 >
きたる4月1日、当社はITCインベストメント・パートナーズ株式会社という現在兄弟会社にあたる投信投資顧問会社との合併を予定しています。これまで、ヘッジファンドやプライベートエクイティ・ファンド等への投資や、マネージド・フューチャーズ等のオルタナティブ投資に特化して運用を行ってきましたが、合併後は、株式、債券等の買持ちやファンドや、インデックス型運用商品を含む伝統的資産運用の取扱いも行うことになります。
日進月歩の金融業界の先端を行く運用手法とは言っても、ヘッジファンドやプライベートエクイティ投資が登場してからだいぶ月日も経ち、それらの投資戦略への投資家の理解も進んできました。投資家の中には、市場環境に応じて、それらの戦略を使い分けるノウハウも出来てきましたし、どのような分散投資の効果が期待できるかも実証されてきました。例えば、2008年のような株式相場の下落局面においてはマネージド・フューチャーズのような戦略が資産ポートフォリオの中でヘッジ機能を果たすことや、株式ロングショート戦略の中にも複数のカテゴリーが存在し、市場環境によって運用成績がそれぞれ異なることなども経験則として理解している投資家も増えてきたと思われます。2011年のような株式には厳しい環境でも、米国の住宅関連債権のパフォーマンスをはじめ、社債投資等は堅調でした。情報の非対称性が崩れていく中、一般の投資家もオルタナティブ投資を従来型の株式、債券投資に組合わせて長期に安定的な収益を実現してきた、先進的な年金基金やソブリン・ウェルス・ファンドの実績を目にする機会も増えてきました。
そのような中、大手機関投資家に限らず、われわれ個人投資家も各種ヘッジファンド投資戦略やプライベートエクイティ、不動産、インフラ資産に代表されるオルタナティブ運用資産と先進国、新興国の株式、債券ポートフォリオをいかに融合するべきか、という課題に直面しはじめています。安定的な資産運用を行うにあたり、分散投資の有効性は従来から検証も進んでいますが、これまでは使用できる資産クラスが限定的であったのが難点でした。しかし、実績のある代替的な投資手法が格段に増えてきた現在では、これらの代替的運用手法を従来型の資産にどのように組合せていくべきか、という検討が重要視されています。
運用サービスを提供する側としても、伝統的資産、あるいはオルタナティブ資産のいずれかに特化するよりは、いかに有効な組合せの運用手法を提供するかを競う時代に入りつつあると認識しています。実際に、米国を中心に従来伝統的な株式投資信託を提供してきた運用会社が、ロングショート戦略の提供を開始するケースも増えています。また、同様に、これまで大手ヘッジファンド運用会社として名を馳せてきた会社が、日々解約可能な高い流動性のある、伝統的資産運用会社のサービスに近い運用を同時に行うようになってもきています。
当社も、投資家の皆様のニーズに応えるため、また、時代の流れに取り残されないためにも、オルタナティブ資産運用、伝統的資産運用の双方で培ってきたノウハウを融合し、ポートフォリオとしてご提供を行ってまいります。ヘッジファンド、プライベートエクイティ・ファンド、コモディティ関連投資ファンドの分野でこれまで運用サービスを提供してきた当社ですが、4月1日以降、伝統的資産運用を加えながら、様々な形で新サービスを提供できるよう努力を続けて参りますので、引続きなにとぞよろしくお願い申し上げます。