第157回 < 再生可能エネルギー関連の投資について >
当社がオルタナティブ投資として位置づけている投資対象の中に、環境関連投資があることは、このコラムでも何度か触れてきました。例えば、排出量関連の取引は、世界の二酸化炭素に代表される温暖化ガスの排出を抑える効果が期待され、欧州市場での取引が活発化しました。当初期待された京都議定書による排出量取引の制度化は、米国、中国の仕組みへの不参加により成果は不十分だったといえます。さらに、積極的に取引に取組んできた欧州では、ギリシャ債務危機以降、景気の低迷懸念が高まったこともあり、排出量の取引価格が低迷しています。
一方、環境改善につながる動きとしては、世界各地で、風力、地熱、太陽光発電等の発電メカニズムの取組みや、家電や大規模施設の省エネ化を通じた消費電力の抑制への取組みが行われています。これらの取組みを後押しするために、各国政府は補助金を準備し、風力、地熱、太陽熱発電などのいわゆる「再生可能エネルギー」の基盤を拡大するために、これらの手法によって発電された電力を比較的高い価格で買取る「全量買取り制度」の制定を行い始めています。環境先進国ともいえるドイツでは、政府による再生エネルギーの「固定価格買取り制度」を1990年から導入して運営を開始しました。特に、2001年以降の再生可能エネルギーの急速な普及は、ドイツがこれらの再生可能エネルギーの売り渡し価格を高めに設定し、当初20年間にわたる長期の買取り期間を設けたことに起因することが大きかったと思われます。
この際、高い買取り価格が魅力となり、多くの発電会社が取組みを開始しました。同時に、これらの事業に投資をすることは、買取り価格が固定であることから、利回り固定の金融商品に投資することと似ているため、多数の金融機関や投資会社が投資を行い、市場拡大を後押ししました。今般、日本においても、長い間協議されてきた太陽光発電の全量買取り制度の詳細が決まりつつあり、7月には制度が開始される運びとなっています。その太陽光発電による電力の買取り価格がこのたび「1キロワット当たり42円」と、関係者の要望に近い価格で決定されました。この発表に先駆けて、幾つかの大手金融機関などが、メガソーラー(1000kW=1メガワット以上の発電規模を有する太陽光発電所)事業に対する投資を行うファンドの組成を発表しています。
環境関連の投資は、不確定な部分も多く、特に再生可能エネルギーは、原油、石炭、ガスなどの燃料に比べて現時点では効率も悪く、コストも高くつくため、一般的には「儲からない」投資対象として投資家からは敬遠されがちです。しかし、地球環境の観点からは必要な取組みであるという認識の下、政府、自治体、企業などが政策による補助やCSRの一環として利益を供与して、他の利益を追求する参加者を募っているという構図です。もちろん、この構図は長期間続かないため、将来的には健全な競争を通じたコスト低下から、参入者が採算の取れる市場となることが前提になります。例えば、ドイツでは、2000年以降の固定価格買取りの固定価格を徐々に下げ、健全な競争を促しています。言い換えれば、現在の日本は、政府の補助や後押しを受ける早期の参加者には利益が出やすい環境ともいえます。個人的には、このような仕組を通じた再生可能エネルギーの普及は、効率もよく、理にかなっていると考えています。当社としても、このような取組みに興味のある、意識の高い投資家の皆様に「再生可能エネルギー」関連投資の機会をご提供できるよう、時機を見て、投資ファンドの組成を検討していきたいと考えています。