第152回 < 米国出張報告 (1) >
スーパーボウルの余韻が覚めやらない月曜日、12日間の米国出張を終え、オリンピックの準備で盛り上がる最終訪問地のロンドンを訪問しています。今回は、既存投資先、投資候補先ファンド運用会社の訪問と、ヘッジファンド会議への参加が主な目的ですが、米国だけで7都市を訪問しました。国内移動でオーバーナイト(夜中に出て早朝に着く)のフライトがあり、国内の時差が3時間あるところを行き来すると、いやでも米国の広さを実感することになります。また、フライトの遅れ、変更、飛行機での預け荷物が届かなかったり、長距離の電車移動の不便さを経験すると、相変わらず大雑把なところだな、と妙に感心したりします。これもまた深夜便で早朝、ロンドンに到着し、空港のシャワーで身支度を終えた後、幾つかミーティングを行いました。幸い時差ぼけはあまり感じないのですが、さすがに睡眠不足気味になります。
今回、出張で運用者とミーティングをしていると、1月の市場環境が良かったことや、米国景気が目に見えて回復してきていることから、全体的に相場に強気な向きが増えてきていることを感じます。昨年の訪問時に感じた悲壮感のようなものも薄らいでいる感じです。もっとも、昨年6月末にも同様のスケジュールで運用者訪問したとき、一時的な強気が増えていた最中に8月、9月の大きな市場調整があったこともあるので、当時との相違点と類似点をみながら、以下、出張の報告をしたいと思います。
2012年に入り、強い株式相場を背景にした強気派の根拠は以下のとおりです。
(1)米国景気の回復。特に大統領選挙に先駆けて行われる景気浮揚対策への期待と実際の雇用回復。例えば、米国での知人の建設業者は自社の3拠点で12月から新規採用を再開しています。
(2)12月に行われたECB(欧州中央銀行)の資金供給の効果への信頼。欧州金融機関が短期で破綻するシナリオが大きく後退したことから、欧州危機に対する不安感が当面払拭されています。
(3)昨年末までの弱気派の売りポジション解消。過度に傾いていたユーロ売り、株式先物売り、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)による信用リスクヘッジを解消することで、相場が押し上げられます。
(4)それでも根強い大方の市場参加者の慎重姿勢。つまり、大きなレバレッジをかけるわけではなく、徐々に買いを入れるというスタンスが大勢なため、底堅い相場展開が演出されやすい地合いとなります。
これだけ景気の基礎的条件と投資需給両面からの強気材料が揃っているため、当面市場が上昇すると思われます。昨年6月末との相違点としては、欧州不安の後退、米国経済への信頼感の上昇が主なものです。各格付け会社による、各国政府の国債格付けのダウングレードも一巡し、市場参加者の反応も限定的になりました。各国中央銀行による大規模な資金供給が継続していることも市場を後押ししています。しかし、いずれの要因もこれまでの欧州債務問題を抜本的に解決しているものではなく、市場参加者の期待が先行している感は否めません。実際、今回、各金融市場で大きく買い越しに転じ始めたヘッジファンド運用者と話していても、まずは3月から4月までの短期的な強気スタンスだという慎重姿勢がうかがえます。
今回の出張で、約45社強の運用会社と面談を持ちましたが、大雑把に言うと、強気、ないしは買い越しに転じている運用者が8割、弱気、売りこしポジションを維持している運用者が2割といったところです。昨年9月あたりであれば、五分五分であった割合からの変化ですので、1月、2月の強気相場の要因は十分に観察できます。次回は、出張中に話題に上った主なトピックについてお話したいと思います。