第371回 < コロナワクチン接種の効果について >

米国や英国に比べて、ワクチンの接種率の遅れが目立っており、OECD加盟国37ヵ国のうちで最も接種を受けた割合が少ないと言われてきた日本ですが、報道などを見ると、ここにきて接種が大分進んでいるように見受けられます。首相官邸から公表されているデータを見ると、6月18日時点で、医療従事者と高齢者を中心に3千1百万回以上の接種が実施されたとあります。

ワクチンの早期確保のための手段を講じなかったことや、接種のために必要となる通知を、電子的な手段でなく、接種券(クーポン)の郵送という手段で行っていること等、他国に比べて、様々な点で日本の対応の問題が浮き彫りになった事態でしたが、職域での接種や、学校での接種なども広まっていることから、遅くとも年内には希望者のワクチン接種は一段落するものと思われます。このように、ワクチン接種の目途が立ってきたことは、先の見通せなかったコロナウィルスとの戦いにとっては朗報です。

世界で多くの人々がワクチン接種を行ったことで、その効果についても広く知られるようになってきたものと思われます。まだ、接種券を受け取ってはいませんが、ワクチンの効果がどれほどのものなのか、個人的にも気になる点なので、この機会に確認しておこうと思います。

ワクチン接種で先行している米国や、国家としていち早く集団接種を行い、早期に国民の大半に対して2回の接種を実施したイスラエルを中心に、すでに接種実績のある国々で効果計測が行われています。厚生科学審議会での資料を見ると、ワクチン2回接種(ファイザー、モデルナ製ワクチン)の結果、感染者の発生率が劇的に改善し、95%以上の有効性が確認されたとしています。重症化、死亡などについても97%の改善がみられるということから、数値上、ワクチンの効果は絶大です。

これは、インフルエンザワクチンの有効性と比較しても際立っているようです。過去に検証されていたインフルエンザワクチンの効果は時期によって異なりますが、例えば、2013年、2014年の日本でのインフルエンザワクチンの有効性が50%前後という検証が大阪市立大学の公衆衛生学教授の福島氏から発表されていました。インフルエンザにはA型、B型などの相違もあることが一因かもしれませんが、現時点までのコロナ対策としては、ワクチンが有効な手段であることは間違いなさそうです。もっとも、死亡率が80%改善するなど、重症化を抑える効果は相応に高いようです。

コロナウィルスにもインド株などの変異型が発生しており、既存のワクチンの有効性が今後も維持されるかは不明です。今後、コロナウィルスが、従来のインフルエンザと同様に、常に身近な存在になるかはわかりませんが、その可能性も十分に考えられます。その際、様々な変異に対して、その都度のワクチン開発も行われるのではないでしょうか。重症化等の確率がある程度抑え込める前提で、ワクチンの普及によって、コロナ前の生活が戻ってくることを十分に期待できます。今回のコロナ禍によって、数少ない良い変化ともいえる、リモートワークをはじめとする柔軟な職場環境への対応はある程度残しつつ、2019年以前の生活が戻ってくることを楽しみにしています。