第374回 < 当社ファンドによる未上場株式への共同投資について >

今般、当社は運用中の2号セカンダリーファンドを通じて月面資源開発に取り組んでいるスタートアップ企業である、株式会社ispaceが行う第三者割当増資の引受に参加いたしました。同社は、現在、月への高頻度かつ低コストの輸送サービス提供を目的とした小型のランダー(月着陸船)と、月探査用のローバー(月面探査車)の開発に取り組んでいます。

同社は、今後、民間企業が月でビジネスを行うためのゲートウェイとなることを目指しており、月市場への参入をサポートする役割を担うことが期待されています。ispaceによる月市場でのミッションは2022年と2023年に予定されており、同社のランダーは、スペースXの機材でアメリカから打ち上げられる予定とのことです。

同社創業者である袴田CEOは、「持続性のある世界に貢献するために、地球と月が一つのエコシステムになる世界を作る」というビジョンを掲げています。その実現のために、いよいよ同社が開発する月面ローバーが来年ミッションを行うタイミングで、当社の運用するファンドがその株主として加わることができるのは、非常にエキサイティングなことだと思っています。

私たちチームが、組成するファンドを通じて未上場株式に対する投資を積極化したのは2015年のことでした。取組から6年が経ち、日本における未上場株式投資の状況を振り返ると、市場環境に大きな変化が見られるように感じています。2018年に本格的なユニコーンベンチャー企業として「メルカリ」が当時の時価総額7000億円超で上場し、その後2019年に時価総額1600億円超で上場した「Sansan」や、「freee」など相次いで大型上場が実現しました。

また、バイアウトファンド大手による大型の国内企業の買収なども2016年以降加速し、1000億円以上の国内案件が相次ぎました。例えば、海外バイアウト大手のKKRは日立グループの子会社である日立国際電気を2000億円以上で、また、日立工機を約1500億円で買収しました。これにあわせて、多くの国内バイアウトファンドも中小規模の案件を積極的に手掛けるようになりました。

当社は、2015年以降、セカンダリー投資という分野でファンドを設立し、ベンチャー、バイアウトの双方の分野でのファンド持分への投資を実行するとともに、VCファンドやバイアウトファンドが手掛ける個別案件に対しての共同投資を実行してきました。その中で、昨年から今年にかけては特に有望な投資案件の増加を実感しています。これは、発行体企業の経営陣及び、投資を手掛けているVC等のファンド関係者のこれまでの努力によるところが大きいのですが、投資のエコシステムが徐々に確立されてきたことが背景にあるのだと思っています。

私たちは、自らが設定しているファンドの投資家の皆様に対して、良質なオルタナティブ投資の機会を提供することを目的としています。今回のispace への資本参加は、協業関係にある国内の優良VCとの共同投資となります。今後も、様々なVCやバイアウトファンドの皆様との協業を通じて、優良な案件への投資を行っていきたいと考えています。