第373回 < 東京オリンピックが終わって思うこと >

2013年9月8日にオリンピック・パラリンピックの開催地が東京に決まった時、当然コロナ禍を想像することもなく、夏の暑さを懸念することはあったものの、開催地ならではの盛り上がりを考えてワクワクしていたことを覚えています。それが、1年の延期、無観客、感染拡大の懸念がある中での開催となり、さらには大会関係者の降板が相次ぐ中、残念なことに、純粋に大会を楽しく迎える気持ちが少し薄らいでしまったように感じました。もっとも、今回のオリンピックをお祭り騒ぎの中で観戦するというより、落ち着いて見ることができたように思いました。

A night from Tokyo to Paris

大会が始まってみれば、各選手のオリンピック出場選出までのエピソードを踏まえて、日本人選手の活躍を、テレビを通じて観戦する中で大きな感動を経験することができました。個人的には、前半のハイライトは男子体操競技でした。団体総合では、ロシア・オリンピック委員会に僅差の銀メダルでしたが、参加4選手の演技には心を打たれました。また、事前の番組で特集されていた参加選手の代表選考までの過程を見ていたので、その感動はひとしおでした。

また、メダルには及びませんでしたが、札幌の街を走ったマラソンでの大迫選手の頑張りを心から応援していました。また、キプチョゲ選手の見事な2連覇には驚かされました。そのほかにも、いろいろな種目それぞれにドラマがあり、心を揺さぶられる場面が沢山ありました。東京が開催地であったから、いつものオリンピック以上に注目をしていまいたし、日本人の活躍が見事であったことも、開催地であったことに起因していたと思います。

今回のスケートボードの西矢選手や開選手、飛び込みの玉井選手など10代前半のメダリストや入賞者が続出していましたが、これに限らず、10代、20代前半の活躍が素晴らしいものでした。また、スケートボードで惜しくもメダルを逃した岡本選手を各国選手が慰め、称える姿、多くの笑顔等、スポーツマンシップの素晴らしさを感じさせる場面だったと思います。

このように、多くの名場面を生み出したオリンピックが閉会して心に残ったのは、参加しているトップアスリートのメンタルの強さと集中力の高さでした。多くの選手がきっと行われていたと思われる凄まじい練習量に裏付けされた実力を、大舞台のプレッシャーに負けることなくかなり高いレベルで発揮していたように思えました。また、ほとんどのアスリートが、競技中、競技後に、自分のことを語る前にまず関係者への感謝を表していたことも印象的でした。

このように、最近のアスリートは若い世代であってもメンタル面でのトレーニングに相当重きを置いている様子が伺えます。心身両面を鍛えることの重要性はもとより言われていることですが、トップアスリートの言動を通じて、精神面での成熟を感じる局面が多くありました。ミスをした場合のリカバリー力、周囲の期待や追い込まれた局面などのプレッシャーのかかった場面での高いパフォーマンスの発揮等、十分な練習を積んだだけで身につくとは思えないような強靭な精神力を感じます。

コロナ禍で様々な変化を余儀なくされている昨今、私たちも実務をうまく行うことだけに集中するのではなく、メンタル面での課題にも取り組み、仕事に対する楽しみを感じたり、失敗を恐れずに立ち向かったり、関係している方々に対する感謝を感じることの重要性に目を向けながら自らの仕事に真摯に取り組むことで結果を出したいと思っています。