第308回 < PEファンドの運用成績測定の方法 (2) >
ちょうど1年ほど前に、同じタイトルのコラムを書いてから(http://www.astmaxam.com/mailmagazine/mail.php?detail=283)、この分野についての調査を進めてきました。このたび、その結果を「証券アナリストジャーナル」という専門誌の2018年10月号に当社の宮田との共同論文というかたちで掲載させていただきました。
PwCの調査によれば、世界における運用資産残高が2016年末には84.9兆ドルに達したのことです。その中でオルタナティブ運用資産残高が10.1兆円、特にPEファンドへの投資は4.7兆円にまで成長したとのことです。また、2025年には10.2兆ドルまでの成長が見込まれるなど、成長著しいアセットクラスであることが分かります。(出典:証券アナリストジャーナル2018年10月号)
この成長に伴い投資家層も広がっています。日本においては、これまで一部の先進的な年金基金や生損保やメガバンクなどの長期かつ大規模な資金運用を行う機関投資家に限られた投資対象であったPEファンドですが、長引く超低金利の影響で融資先や運用先を模索する地域金融機関などが新たな投資対象としてこの数年間で組入れを開始、あるいは増やすようになりました。
このように、投資家層の広がりを見せているPEファンドですが、これまで流動性の高い上場有価証券投資を中心に扱ってきた投資家から見ると、投資に関わるオペレーションやリスク管理面で勝手の違うことが多く出てきます。特に、日々の時価が公表される上場有価証券と異なり、PEファンドへの投資は投資対象の時価評価が困難です。また、一度投資を行うと、原則はファンドの存続期間である10年間あるいは延長期間を合わせるとそれ以上の期間投資を継続することになり、途中解約ができません。また、PEファンドの母集団から投資対象となるファンドを選び出す作業にしても、ファンドの優劣を比較するための定量データが限定されています。昨年のコラムでは、PEファンドの選定に必要な考え方と、今回の論文に書いたようなPME(パブリック・マーケット・エクイバレント)と呼ばれる手法を用いたPEファンドの運用成績の測定方法について言及しました。今回、「証券アナリストジャーナル」では、PEファンド特集ということで、私たちの論文以外にもPEファンドのベンチマーク作成方法やPEファンド投資の実務家の考え方が掲載されています。
このように、近年日本におけるPEファンド業界が成長してきたことで日本のPEファンドやベンチャーキャピタルのベンチマーク組成の議論が活発化しています。業界全体の当面のゴールは日本の機関投資家や海外投資家から継続的な投資を得られるような資産クラスとしてPEファンドやベンチャーキャピタルが定着することです。私たちも今回の論文を掲載して頂いたことを契機に、更に国内外の投資家が安心してPEファンド投資を行えるような環境づくりに関与していきたいと考えています。