「何食べたい?」って聞かれて、答えてはいけない答えとは。。。
食欲の秋、真っ盛りの今、皆さま、ダイエットなんて概念を忘れておいしいものを食べてますか。私は、と言えば、この引きこもり生活で料理という料理がシンプルになってしまい、うどんの乾麺を袋の中身を全部一気に茹でてはラー油ベースのつけ汁に、たまに豚バラ肉ともやしを胡麻油でさっと炒めたものを入れて食べる、なんて炭水化物過多な生活をしております。しかも、そのお陰でか、この間なんて、夢の中で投資業界のあちこちの皆さんと集まって昼から、いつもイベントを開かせていただいているおしゃれイタリアンで飲み会をしていたのに、アルコールを一口も飲んでいないのに寝落ちた、という体たらく。本当にその節は、ご多忙の中にも拘らず、私の夢の中にお集まり頂きました関係者の皆様に寝落ちなんてご迷惑をおかけ致しました。謹んでお詫びするとともに、そんなことが起きないように、リアルな生活でジンやウォッカのストレートで日々鍛えるよう精進いたします。
さて、そんなキッチンドランカーのような生活を見かねてか、私にランチのお誘いが。しかもわざわざ浅草に来ますなんて言うんです。なんだか朝の連続テレビ小説の異作、「あまちゃん」で地方アイドルの主人公の相方のゆいちゃんが「私に会いたかったら、北三陸に来い」と言い放ったのと同じことをどこかで言ったかしら、と思いつつも、実はわざわざきた人たちは食いしん坊なので、お目当ては私ではなく浅草グルメにやってきた、という訳です。顔見て一言目が「美味しいところ連れてってくださーい」なんですから、ほんまなにしにきとんねん(笑)
ということで、やっといつもの始まりのお約束ですが
私の住む浅草ということところは、まぁ、色々と食べ物屋が多い。このところ引き合いに出しているような、近所付き合いが出来ずにゴミ問題で町内会と大揉めした、最近あまり見ないけどグルメで鳴らしたコミックバンド芸人のフィンガーフードなどはもちろんの事、昔からの有名なお店、なんてものがゴロゴロあって、最近でも閉店してニュースになるくらいのお店ってのもそこそこあるし、新しく始めるお店なんてのもたくさんありますから、浅草に住んでいれば美味い店を知っているに違いない、と普通にお薦めを期待されます。しかも、#みやたべろぐ なんてinstagram やっているから、さぞや安くて美味しいお店をたくさん知っているんだろう、とハードルも走り高跳びのバーくらい上がるものです。
で、常に皆さんの期待に大盛りで応える男、超オタクなおっちゃんな私ですが、実はこの質問、苦手なんですよね。取り敢えずこの食いしん坊二人組とはお付き合いが長いので味覚のストライクゾーンが太平洋くらいの広さだとわかっているからまだ良いのですが、お客さま候補とのアイスブレイクを意図した初の飲み会、とか言ったら大事な初デートな訳ですよ。ちゃんとボウタイを手結びしておしゃれに決めるのは当然のこと、味覚の嗜好の知らない人にそれなりに印象付けをせねばならない、だからと言って自分が言ったこともない無駄に有名で予約の取れない店を、なんて仕事としては雑で、嫌味で、値段に反比例する安っぽさで恥ずかしい。味もサービスも、なんなら店主やスタッフの人柄も自分がよく知っていて、でもあまり人が知らない、で実はお値段もリーゾナブルで味付けとか実は自分好みだから、と連れて行った人が後で自分でも来たくなるお店、で勝負でしょうよ、そこは。ほんと、そういうご接待の時にはお店に自分がお客で言っちゃダメでしょ、だからおまえさんはただ単に飲んでるだけだってお客さんから言われるんだ、ほんとにわかってねーなー、って私、誰に言ってるんでしょう。
それはさておき、私も気づいたらもう良い歳したおっちゃんですのでそんなカードは数枚持ってはいますが、それが浅草に、しかも昼間に、ストライクゾーン太平洋並みの相手に使うか?まぁ、多分当の本人たちも読んでいるのを知っていて書くのは申し訳ないのですが、そんなカードを出さずとも、浅草には十分ご満足いただけるお店がたくさんありますので、そんな中から一緒に選んでいきましょう。
「何食べたい?」になんでもいい、とか言っちゃいけません。なぜなら言われたほうの頭の中では。。。
一緒に?はい、隠れたニーズを引き出す質問をいくつかすると大体決まる、魔法のような質問の方法があるんですよ。
「和洋中、何食べたい?」
ええ、「和洋中」ですよ。なんならエスニックを入れて「和洋中エスニック」でもいいですよ。流石に、この質問で「なんでもいい」と答える人はいないですよね。いや、そこを頑張って答えなくていいんですよ。で、続いてこんな質問です。
「早く食べたい?ちょっと歩いてもいい?」
はい、大体これでお店が決まります(笑)おいおい、普通じゃないかよ、と思った人、まぁ、そうですよね。でも、聞かずに想像して見えない敵と戦うよりも、素直に聞いて相手を知ることはとても大事なことですし、この選択のロジックを図式化するとなぜそうなのかが数学的に説明がつくのです。
まず、先程の質問を2次元マトリックスにしてそれぞれに候補を入れることになります。もちろん、そこには自分の信じるベストをそれぞれ入れますので誰にも文句は言わせませんし、うちの店が入っていないじゃないか、というクレームはご遠慮くださいw
そこで、質問をするわけですが、最初の質問では、3つ(エスニックを入れたら4つ)のうち、前日のお昼のメニューから個人的な趣味、主義、主張、果ては宗教の理由に基づいた、日々変わる自分のその瞬間の食べたい好みに合わせて重み付けをしていることになります。そして、次の質問では、ここからの距離や食べ始めるまでの時間から、空腹感や疲労感のような体調、もしくは途中の街歩きへの期待などの元気度合いで重み付けをしています。ここでは便宜上、最初の質問には 1点から4点まで、次の質問では1点から3点までで点数づけをし、それぞれに合致する項目には掛け算で評価する、としています。え?たかがお昼ご飯のために?ええ、たかが、ですがされどですぞ。物事というのは定量的に評価すると判断は楽になりますよね。常に、判断というのは疲れるものです(と前回の記事のオバマ元大統領のエピソードに戻る)。
で、この時は、といえば、さすが食いしん坊さんたち、早く食べたーい、浅草といえば和食でしょー、ということで、一番点が高かった尾張屋さんに行くことにした、のですが当然、次のような定量分析が裏側にあったなんて、食いしん坊さんたちも知る由もありません。
もし、この選択肢を、もし間違えて(?)今朝立ち食い蕎麦を食べてしまったから、という理由で、中華が食べたくて、うまいもののためだったら、なんなら浅草の外でもいい、なんて言われたら、このチャートによれば上野のガード下にある巨大な餃子で有名な昇龍に行く予定だった訳ですが、そうなるともはや待ち合わせが浅草である必要すらなかったわけです。
ということで、この重み付けの作業、というのは当然、常に一定ではなく(あ、そうそう、よく北極星くらい確実、という表現がありますが、北極星って数千年すると指す星が変わるんですよね。だから星座占いなんてのも2000年前と地球と星座の関係が変わっているのですからその信憑性たるや、って、これも関係ないですね)、それこそ体調や感情、昨日の食事などに依存することから、女性の気まぐれ(おっと、なんちゃらハラスメントって怒られるなw)と秋の空くらいコロコロ変わって当然、な訳です。
さて、一難去ってまた一難。人生とは選択の連続。
さて、無事に尾張屋さんの暖簾をくぐると、これで当然終わり、というわけではなく、メニューを片手に、どのお蕎麦を食べたいか、それとも蕎麦屋といえば天ぷらだから、天丼に行くか、両方楽しむために天せいろに行くか、という次なる困難が待っています。本当に人生ってのは選択の連続です。だから人生ってのはストレスの(以下省略)。まぁ、この時になると、定量分析、というよりはメニューにある字面や写真付きのメニューの写真から料理を想像して、あれいいだろうなぁ、という想像のランチを一回やってから選ぶことになるわけですが、私は秋の味覚の王様、松茸せいろを楽しみ、食いしん坊さんたちは。。。本人たちの名誉のために何を食べたかは内緒、にしないといけないくらいたくさん食べた、とだけここでは触れるにとどめるとします。
しかしまぁ、たかがランチ一回を決めるのに大袈裟な、ときっと思ったでしょうね。でも、私の以前の上司でヘッジファンドの世界で超有名人なあの人(ええ、あの人です)も、人生における食事選びの重要性についてこんな風に言いました。
「残りの人生の、俺の大事な一回一回の食事、外すなんてあり得ない。え?食べ○グのレーティング見ないで飛び込みで入る?ありえない。」
レーティングほど当てにならないって、いう人がいうんですから人間というのは全く、というところですが(笑)もちろん、このブログお得意の、相変わらずの無理やり当てはめたストーリー展開ではあるのですが、これって実は投資にあたってDDQを読み込んでいくプロセスと結構似通った話なのです。
# ということで、今回の記事、実は、前回の研修会の内容のチラ見せの続きだったのです。
長くて読みづらいDDQをうまく使うには
考えてみてください。さて、これからとある戦略のスペースに投資しよう、という時に、その戦略が世の中に一つのファンドしかない、なんてことはあるでしょうか。弊社のセカンダリー戦略の運用者の世界も、ずいぶん長い間、地方の無人駅の周辺の食堂の数に近い状態におりましたが、つい最近も巨大企業二社さんが入ってくる、なんてアナウンスを出してくれましたので、注目を浴びることで今後プレイヤーが増えるかもしれませんね。そうなった時に、星の数ほどある(って、そんなに増えないか。そもそも星の数ってJAXAによれば、私たちの銀河系で2000億個、そんな銀河が宇宙に1000億あるそうですから、数学者的にいうと、高々有限数でありますが、現実問題としてはかなりの数ですね。)全部のファンドのDDQを全部読んで判断する時間を取ることが出来るでしょうか。弊社の立場としてならば、弊社のファンドのDDQだけぜひ読んでいただいてご贔屓に、と言いたいですが、なかなかそんなエコ贔屓が出来ないし、と言って全部読む時間がない、となると、ある程度DDQのサマリーとなる情報を読んで考える、もしくは定量化して絞り込みたい、そして選別した先についてだけ詳細を理解して判断したい、というフィルタリングのニーズが出てきます。
ということで、ILPAのDDQの構成をちょっと眺めると
そこで、前回紹介した ILPAのDDQのVersion 1.2では、先ほどのようなマトリックス形式とは行きませんが、下記の14の分野について、まずYes/No の形での質問をして、その後に文章での回答、という形式をとっています。(ちなみに、7についてはYes/No形式の質問はありません。よく考えてみると、市場環境に「あなたの過去の市場環境での判断は常に正しかったですか?」なんて二択の質問なんてあったら怖いですよね。。。)
1. General Firm Information
2. General Fund Information
3. Investment Strategy
4. Investment Process
5. Team
6. Alignment of Interest
7. Market Environment
8. Fund Terms
9. Firm Governance/Risk/Compliance
10. ESG
11. Track Record
12. Accounting/Valuation/Reporting
13. Legal/Administration
14. Diversity and Inclusion
こうすることで、Yes/No形式の質問でそのファンドの概要を知り、その投資家サイドで重要視するものとそうでないものについて(簡単にYes=1/No=0でもいいから) 重み付けをすることで Yes/No形式の質問を定量化して、同種のファンドと比較が出来るようになるのです。
それにしても、結構多岐に渡った分野について質問をしてきますね。しかも、そこそこに選択問題だけでもボリュームがあります。さらに言えば、弊社でも14については特に回答に悩みました。前回作成した当時はまだ合併前でしたから、全員合わせても6名程度の、平均年齢50歳を超える、日本のまるドメのおっちゃんがおっちゃんを呼んで出来た集まりでした。そこで敢えて男女比を1:1にするよりもそれぞれの分野のエキスパートを集める方が会社のチームビルディングと投資家の皆さんにリターンを返す体制づくりとしては大事なのですが、まさか「ダイバーシティアンドインクルージョン」ですよ。人見知りの私が有能な女性をチームに声がけするなんて、恥ずかしくて出来ません(笑)なんてこれに答えましょう。でも、世の中の投資、特にプライベート投資の世界では、より、ESGが、SDGsが、台場シティが、いやダイバーシティがその意義と貢献という観点で問われる世界、なのです。実際、ILPAのDDQのVersion 2.0について現在ドラフトが公開されてパブリックコメントが求められていますが、並行して、Diversity Metricsというものもパブリックコメントが求められています。これは会社内などの男女比だけでなく、その人種や国籍などの多様化を測ろうという試みのようです。こういうところを思うと、チーム構成の分散化というのを意識しないと、なんて思うのですが、これがなかなか難しいんですよ。。。
まとめ:定量化が大事なのはわかった。でも、そのロジックが恣意的だとこうなる(笑)
ということで、ランチを真剣に定量化までして決める、ということの重要性をご理解頂けましたでしょうか。機械学習で自動運転を実現させるためのロジックにも使われるこの手法でもあるのですが、脳内でのこういう不断のトレーニングの繰り返しが、美味しいランチにいい確率で出会うというオマケと共に、判断に対する客観性と信頼性を積み上げていくようになる、はず、なのですが、ここだけの話、実はこの日は何があろうと、食いしん坊さんたちからどんな反応があろうとも、尾張屋に行く一番大きな重み付けというか動機が私にはあった、のです。
この尾張屋、私の家族が、まだ私が女の子と間違われるくらいに可愛かった幼少期に、関西から環七最強の足立のヤンキーの巣窟と言われる西新井に引っ越してきたタイミングで、これからはあなたたち家族と別居するわ、と言って、10代に千葉の片田舎から芸者として亀戸に出されてから60過ぎてやっと戻った生まれ故郷で 89歳で亡くなるまで一人で過ごした祖母が、私が幼稚園児の頃ってことは1975年にはまだATMというかCDを銀行間で繋げるMICSも始まっていない時分に、時々東京に出てきては、自分の銀行口座のあった某今でいうSMBCの浅草支店にわざわざ生活費を引き出しに行くのに私と弟を連れて一緒に浅草散歩に連れ出してくれたのでした。その時のお約束のコースが、この尾張屋でおそばを頂く、というものでした。ですので、私にとっては尾張屋というのは祖母とのそばの思い出、なのです。
さて、そんな祖母が他界してもう16年、クリスチャンだった祖母は地元の教会の納骨堂で眠っているのですが、教会の先生曰く、10月31日の晩に亡くなった方達が地上に降りてくるので、11月1日に亡くなった方達のための礼拝を行う、そうなのです。あれ?ハロウィーンも、確か10月31日の夜にお化けがやってくるので仮装して、なんて話ですよね。元々がアイルランドの言い伝えとも言われているのですが、どうやらそういうところにお話の根っこがあるようです。実際には、仏教でも同じようですが、生きている人たちの生活を重視して礼拝をその前後の日曜にする、ということですので、普段は仕事でオフィスに頑として行かずに引きこもってますが、今年もこの週末は千葉の片田舎にある納骨堂に昨年から眠る母と祖母のそばに行こうかと思っています。
お後がよろしいようで。