網の目を潜るなんて言葉がありますが、ファンドの世界の法の目は細かすぎて

私の住む浅草も、6月も後半ともなれば、浅草周辺の主だった神社さんのお祭りも一通り無事に終わって、一休み。後は月末の夏祓いと2回目の植木市を経て暑い夏がやってくる、という感じですが、そうそう、その植木市も今年は無事に開催されました。観音裏の見番通りに当たる通りにずらっと並ぶ植木の数々、というところですが、ここでもこの時期に何度もご紹介しているから覚えていただいていると信じてはおりますが、この植木市というのはこの見番通りを抜けて東西に流れる小松橋・一葉桜通りの東のはずれにある浅草警察署の斜向かいにある浅草浅間神社さんが7月1日に、富士山の麓の浅間神社の山開きでお参りに来るのと合わせて、富士山に登ったのと同じご利益を求めて人が集まるのに合わせて市が立って人が賑わったのが始まりで、その時に植木屋さんが多く集まったので植木市になった、とされています。

じゃあ、なんで今は5月と6月の最終土曜日とその翌日にやるのか、というと、7月1日が平日になった時に道路規制がしづらいから、土日に、という警察との調整があったから、なんて話を、先日、三社祭の直会という名目で町内会の役員さんで集まった時に聞いたのですが、その都合か、確かに今年は道路の利用許可の都合なのか、それとも感染防止の都合なのか、植木屋さんの店の出し方が不思議と片一方の車線に寄せられていました。その分歩きやすかった、といえば聞こえはいいですし、この写真のようにずらっと並んでいるように見せることも出来るのですが、道路の両脇に所狭しと店が並んだ賑わいからはほど遠い眺めを人によっては寂しいと感じるのかも知れません。

人の行動はいろいろな理由で決まるけどファンドは?

さて、この市ひとつ取ってみても、人の行動というのが山開きのような宗教的な決め事ごとであったり、人の集まるとこにお店を出そう、という経済的な意図であったり、はたまた、道路の一時的な占有利用のような法的な制限、そして今時のソーシャルディスタンスを求める行政であったりと、いろいろな不文律から明文されたものまで、広い意味でのお約束が歴史的に絡み合った結果で成り立っていることが見えてきます。そう思った時に、より論理的と思われているファンドの世界、というのが想像以上の法律の網の目で出来上がっているのに、割と世の中の人たちの多くがひとつ二つ程度の法律だけしか気にしていない、という面白い現状を少しいじってみようと思います。

ということで、まぁ、世の中の人がまず、ファンド、というと、器のことを語り出したくなるのをよくみますし、これさえ語れれば、まぁファンドのことを知っている、と人に吹聴できるくらいに思われているようです。例えば日本で不動産を含めて人様からお金を預かってファンドを作ろうなんていうと、いわゆる3つの基本系の仕組みを踏まえると、まぁ、大体次のようなものが一般的には使われています。

スキーム

時々、有限責任事業組合とか、合同組合とか使ってやろうとする人もいますが、(理由とか背景を語ると止まらなくなるので内緒にしますが)正直センスのかけらもないし一歩間違えれば詐欺師の手口ですので、そういうスキームを見たら泥棒と思っていいでしょう(べーっ、だ)

まずは器を作る根拠法

で、これらの器を作るにはその準拠法というのがそれぞれありまして、その法律に従った設立や必要に応じて登記を行う必要があります。

根拠法

投資家さんを募集するにも

さて、ファンドなんてものは、器が出来ただけでは誰も褒めてくれません。セクシーな投資戦略に基づいてセクシーなリターンを創出する(だけどこんなに危ないリスクがたくさんあるけどそういうのはフォントサイズ小さめでこっそり)というお約束を投資家さんにしてお金を集める必要があります。いわゆるファンドの募集という行為ですね。これを行うには、大きく分けると金融商品取引法に基づく一種もしくは二種証券の勧誘・募集行為を行う金融商品取引業を行うか、不動産の一部のケースでは、不動産特定共同事業法に基づく不動産特定共同事業契約の締結の代理もしくは媒介、また、それを特定事業者に代わって締結することで行うわけです。

募集

資産運用だって

さて、お金を集める契約をしてお金を集めたら、今度は、お約束に基づいたセクシーな投資戦略に基づいたセクシーなリターンの創出を実際に行うわけですが、人様のお金をその計算に基づいて売買を行うことは金融商品でやるならば、金融商品取引法における投資運用業という行為にあたりますし、不動産特定共同事業法の世界ならば不動産特定共同事業契約に基づいて運営を行い、その収益を直接分配する、もしくはその委託運営に基づいて不動産取引を行うことにあたります。

運用

資産の取得・保有・処分だって

ところで、資産の売買、と簡単に書きましたが、大きな意味で私人間の資産の売買は民法によって規定されています。もし株式の取引だと、取引所を経由した取引ならばその取引所での取引を含めた運営ルールやその取引される証券の取得や保有に関して、そしてその取引される証券自体の開示義務が金融商品取引法に基づいて発生したり、取得や保有が独占禁止法に抵触する場合があったり、場合によっては取得にあたって外為法の事前や事後の届出が必要な人がいたりします。
また、不動産の世界ならば、不動産は保有しててもお金は産みませんから、利用してもらうように賃貸借に出す必要がありますので借地借家法や、それに基づく賃貸借契約の締結を宅地建物取引業に基づいて行ったり、建物の管理保全についてもいわゆるビル管理法やマンション管理適正化法があり、そもそも建物を取り巻く建築基準などの法律などがたくさんあるわけです。

取得・保有・処分

お金が動けば、AMLとかKYCとか

その上です。お金が動く、ということは、その度に、と言うと極端ではあるものの、お金の動きには必ずAML/KYC、日本だと犯罪収益移転防止法、名刺交換からKYCなどのプロセスで集めた個人情報を管理する個人情報保護法なども、ついて回ります。

そして、投資の一番の悩みである税金だって法人税法や所得税法などの各種税法によって決められています。

AMLとか KYCとか

と思うと、ひとつくらいサボって楽させてよ、と思うかも知れません(苦笑)

でもなぜ、法律が縛り付けるのでしょう

でも、法律は確かにそれで経済活動を規制する場合もありますが、他方でそれによって広い意味で弱者だけでなく、あなたのファンドの資産を守るセーフティネットの役割を果たします。要はファンド運営する上で一番大事な(しかも、あなたの生活費となる運用報酬を払ってくれるスポンサーである)投資家さんを守るのです。それをすっ飛ばすってどうなんでしょうね。

余談:アウトライヤーは辛いよ

ちなみに、なのですが、かく書いています私、一時期、(いわゆる63条特例業務ですらなく)金融商品取引法の外にいながらファンドビジネスに携わる、なんてことをしていました。こう書くと、規制のかからないビジネスなんていいなぁ、なんて思う人もいるかも知れません。でも実際にやると大変なのです。日本で金融に携わると、行為の何かしらが金融商品取引法に基づく業務に抵触する可能性が上がります。ということは、この条件を満たさないようにするにはどうしたらいいか、というテストを常に確認しながらビジネスを継続する必要があるのです。実は、それはコンプラアンスという形で遵法性を確保するのと同じかそれ以上大変なことです。しかも、法律というのは常に変化しますし、その時々で法の解釈が変わる可能性だってあるのです。とすると、過去に抵触しないと考えられていたことが明日抵触してしまうことだって多いにあり得たのです。つまり、まぁ、金融商品取引法には否が応でも詳しくなる一方で、落ち着いて寝られた日なんてなかった、ということです(苦笑)

としたら、ひとつサボる、よりも適用される法律のフレームワークの中で取引を行うことが実はコストもストレスも掛からないベストな方法、なのです。実際、法律遵守を行うのも本当に大変ですが、それさえきっちりおこなっていれば適法な状態でビジネスが出来るのですから、そんな辛い思いをわざわざしたい、という人が減るわけですので、事業に対する参入障壁があるので、その意味でも守られている、とも言えるのです。
網の目?蜘蛛の巣?

まとめとちょっとお知らせ

ということで、今回は、ファンド運営と法律は切っても切れない関係、なのであれこれ法律とその改正には目を光らせていなければいけない、ということではあるのですが、今回日本の法律だけ見てきましたが、ケイマン諸島のようなオフショアにファンドを作って投資家は日本とどこそかと、と始めるとみなければいけない国と法律が一気に増えるので、さらに大変です。#カリスマファンドアドミまたは史上最強のコントローラー見参 というにはこんなリーガルセンス、まず最低限必要になります。お金だけ数えていても仕方ないですよ!

なんて今回書きましたが、どうも世の中の方は10,000字程の記事は読まない、ということが最近の弊社での研究でわかりましたので、実は今回から動画や音声配信も始めるということで、その準備で一回スキップしました。ちゃんと本当に配信が始まったらリンクも貼られると思いますので、その際にはそちらもチェックしてくださいね。多分、ここで書いている以上の余計なことをたくさんしゃべると思いますので。。。