「自動車」と掛けて「ベンチャー」と解く。その心は
私の住む浅草と言うところは、ご存知のように東京の比較的東側に位置しますので、同じ都内でも山手線の西側に住んでいる方たちによく、ちょっと遠くて行ったことがないよ、言われることがあります。
確かに、都心方面から浅草に電車で来ようとすると、地下鉄銀座線か浅草線に乗って山手線の東側に向かうため遠いイメージが出来てしまうようですが、実は東銀座から15分、品川から30分、神田から15分、渋谷からも40分ですし、浅草の南側には大江戸線が走っていますから新宿からも30分程度。そして、バスで池袋からも一本で出られますので、公共機関で大方たりてしまいます。
そのお陰もあり、また周囲の駐車場が少ない(し高い)事などもあって普段の生活において車を必要と感じることもなく、もし車が必要ならばカーシェアリングかレンタカーを利用しています。これでも車好きの諸先輩方から 今どきの若い奴は、と言われますし、所有と利用の分離、いわゆるシェアリング・エコノミーの一端にいる、とも言えるのですが。。。
知らなかったけど、電気自動車って
さて、そんな私ですが、レンタカーを借りて東京から200km ほど離れた地方都市にいくことになり、オンラインで車を予約して当日車を借りに行ったら、電気自動車が待っていました。
生まれて初めて電気自動車に乗る、と言うと大袈裟に聞こえそうですが、レンタカー屋さんから、結構ガソリンエンジンと比べて挙動がリニアですよ(特にバックするときは!)、なので車の少ないところでまず慣れてくださいね、と言われて脅された(笑)とか、給油の代わりの充電施設の利用方法をざっくり教わったり、と、路上に出るまで何故かドキドキしていましたし、路上に出て、アクセルを踏んで、言われてはいたもののその予想以上のレスポンスの良さに驚いたのでした。
さて、電気自動車の驚きはこれからです。
すべてが電気で動きますので、アクセルだけで運転出来るモードがあります。止まるときはアクセルから足を完全に離せば強力なエンジンブレーキが掛かるように設定され、かつブレーキランプも踏んでいないのにちゃん点灯して後ろの車に分かるようにしているそうです。子供の頃に乗ったゴーカートの感覚で運転が出来る、というと分かっていただけるでしょうか。個人的にはいきなりガクン、と止まる感じになるのが同乗者の車酔いを引き起こしそうなので、エンジン車のクリーピングのような遊びで調節したいと感じるのでアクセルワークがなかなか難しい。
また、テレビCMでご覧になったことのある方もいらっしゃるかと思いますが、ボタン一つで指示したところに車庫入れしてくれるモード。設定するのに慣れが必要と充電の都合で前方駐車が基本の電気自動車なので慣れ親しんだバックでの駐車は自分でせねばならないし、正直自分でやったほうが早いかも、と思ったり。でも、車体のあちこちについているセンサーとモニターを使って自分の車を真上から見下ろす画像を見せてくれるアラウンドビューモニターも搭載していて、これは重宝しました。
それ以上に便利だったのが、高速道路の運転時のオートクルーズコントロール機能。昔ならば速度を一定にするだけでしたが、今では車線のセンターを常にキープし(ハンドルは添えているだけで、勝手に動く感覚を味わえます)、前方の車との車間を維持するように速度もコントロールします。ですので、高速移動のときよりも渋滞の時の運転でアクセルワークと細かいステアリング(もう一度言いますが、手放し運転は出来ません。車がステアリングを握っていないのも検知して警告を発したり、車線維持機能を止めたりします。)から解放されて本当に楽、でした。 (おまけに、ガソリンを満タンにして返さねばならないところ、充電設備がレンタカー屋さんにあるので充電満タンで返す必要もなし!)
今や自動車はベンチャー企業のビジネスチャンスの宝庫
さて、ちょっとだけ投資の話に寄り道しましょう。19世紀生まれた自動車ですが、その基本的な構造や機能はほぼ変わることなく、操作性の向上や運動性能の向上、快適性の向上、そして燃費のような環境性能の向上などは日々おこなわれています。それらの多くは車を製造する企業が行いつつ、外部企業も従来はタイヤやホイル、エアロパーツからステアリング、車内の音響設備、カーナビ、と言った、パーツの供給という形でそのエコシステムに付随して入っていました。ですので、20世紀の終わりまでは、車のオーナーが自らの趣味でその車と室内空間を楽しむもの、という位置付けにありました。
ですが、21世紀に入り、シェアリング・エコノミーの普及で、もともとあったレンタカーのビジネスがより手軽なカーシェアリングの形で身近で手軽なものになったり、海外ではタクシーがわりの個人での乗合サービスが普及している地域もあります。そして、電気自動車ベンチャーを筆頭に、前述のような車内や車外のあちこちにセンサーをつけることで運転のサポートをするような技術が使われたり、最近のIoTとそれを支える通信インフラの向上と低価格化のおかげで、タブレットが単にカーナビの代わりのいい奴(CDやDVD、ブルーレイの地図情報は常に遅れているから、海上や山の中を走っていることも多いですよね。。。)、程度の使われ方に止まることなく、通信機器が自動車の電気系統とより深く接続されることで、クラウドと繋げることによって、車から離れたところからエンジンを掛けて暖気をとらせてみたり、車の位置情報や速度情報などを逐次アップロードすることでドライバーの運転性向を判断したり、盗難時の追跡に使えるようにしたり出来るようになりました。さらには有名なコマツの作業機器のようにそれぞれのパーツの利用時間を記録することで部品交換時期の予測やリース未払い時の起動停止を全てセンターからコントロール出来るようにする、といったように気がつけば車自体が IoTと化していると言っても過言ではないでしょう。また、車に繋がらなくとも、スマホの所在地情報の分布を集めて渋滞情報や渋滞予測、渋滞回避ルートの算出、のようなことも出来るようになっています。
とすると、自動車を取り巻くベンチャーが、大きく目立つ環境問題の解決方法としての電気自動車の性能の向上とそのインフラの整備、自動運転とそれによる社会問題の解決、というトレンドの他に、車を情報の塊、として捉えて、その情報をいかに取り出し、利用するか、という大きな流れにおいて大きな進歩が起きている、と見ることができます。国内でも、独立してこれらに取り組んでいるベンチャーが増えていくのでしょうか。車というのがなかなかコンピュータのような基本システムとアプリ、のような関係にないのと、API のようなフリーでオープンな I/O 規格という概念が難しいようですので、参入が難しいのかもしれませんが、興味深いところですね。